「昭和的かもしれないが」賛否両論の店主・笠原将弘が語る「働くこと」と「将来は店を継ぐ」宣言をした息子への本音
── 笠原さんも修行に出ていますよね。 笠原さん:俺も親父が店をやっていて、小さい頃からそれを見て育ったから、親父と同じ料理の道に行くって、「ここで働けばいいのかな」くらいの軽い気持ちでいた。でも親父から、「家だと甘えが出るから絶対に外に行ってこい」と言われて修行に出たんですよ。 外で、知らない世界で揉まれると自分の店の見方も変わるので、本当に親父の言う通り、行ってよかったなと。外に出て働いてみると、お金を稼ぐって大変だなとか、人間関係って大変だなとかいろんなことを学ぶじゃないですか。親父は料理人としてもすごかったということは外に出て改めてわかった。「親父、魚おろすのうまかったな」とか、後になって思いましたね。それに、料理だけじゃなく、人間関係を学ぶことも必要。でもこれはどの業界でも一緒だよね。
おかげさまでこの業界には知り合いがいくらでもいるので、息子が外での修行に耐えて戻ってきたら、最後の難関として俺が誰よりも一番厳しくしようかと思っていますよ(笑)。 ── やはり料理の道は、厳しい世界ですか。 笠原さん:うちの店も週に必ず2回休みを取るとか、労働時間に関しては、俺の修行時代に比べたらだいぶ楽だとは思う。でも、いまだに「修行」っていう言葉が残る世界だから、世の中的には、「ブラックだ」と言われるかもしれないよね。でも、言い訳はできなくて結局は自分だから。上手くなりたいんだったら本人がやらなきゃいけないと思う。
■昭和的な教えかもしれないけれど ── 長女と次女は社会人だそうですが、仕事の悩み相談などはされますか。 笠原さん:娘は会社の愚痴を言ってきますけど、俺からしたら「それは当たり前だろ」って思うことばかり。俺は、もしかしたらうちの子どもたちには昭和的な教えをしているかもしれないね。「雇ってもらっているんだから、感謝しなきゃ」とか、「職場の全員と気が合うわけじゃない」とかね。 10人いたら性格も10人それぞれで、合うタイプも違う。「自分には合わない」とか、「思ったのと違う」とか娘が言うけど、「そこはお前が合わせるんだよ」って。すべてが自分の思い通りになることなんて世の中ないし、理不尽なことがあるのが社会。そこをどう乗り越えていくかで、だんだん自分のしたいことができるようになる。