米国がウクライナに「長射程攻撃容認」、その意味や戦局への影響は
バイデン米政権は、ウクライナに対して米国製長射程兵器によるロシア領への攻撃を容認することを決めた。 この決定は、ウクライナの対ロシア攻撃を巡る大きな方針転換となる一方、戦争を激化させる恐れも指摘されている。 ◎ウクライナにとって何を意味するのか バイデン氏の決定は、ウクライナが和平交渉を有利にする目的でロシア西部クルスク州で制圧した地域の防衛の足掛かりになり得る。また、ウクライナ軍がロシアの空軍基地を標的にすることも可能になる。 英王立国際問題研究所のロシア・ユーラシア問題担当者 ジェームズ・ニクシー氏 「これは劇的な一歩だ。ウクライナ軍がロシア領内の重要な軍事拠点やインフラを攻撃することが可能になるためだ。ロシアの戦争遂行能力に確実な影響を及ぼすことになる。ただ正直、ウクライナが完全勝利することは近い将来には起こり得ないだろう。ウクライナが戦争に勝つためには、いま以上にロシアを締め付ける必要がある。つまり、これは非常に大きな一歩だ。クライナ側は大いに安どしているだろう。ただ、戦況を一変させるとは言い難い」 ◎ロシアの反応は ロシアはこの決定に強く反発。北大西洋条約機構(NATO)の直接の支持なしには実行できないと指摘。紛争の急激なエスカレーションに当たると警告した。 ロシア大統領府は18日、米国は紛争に直接関与することになると表明。プーチン大統領も9月、こうした決定に警告を示していた。 プーチン大統領 「決定されれば、NATO加盟国や欧米諸国はウクライナ戦争に直接関与することになる」 ◎次に何が起きるか ウクライナ軍による初の長射程攻撃は、今後数日中に起きる可能性がある。 ただ、バイデン大統領の任期が残り2カ月となる中、次期米政権がこの決定を覆すかどうかは明らかではない。 「トランプ氏が大統領に就任すれば、この決定は覆される可能性も。SNSへの投稿や、発表されている人事から、その可能性が高い。ウクライナは1月中旬までに、できる限り最善の立場に立っておく必要がある。トランプ氏が大統領に就任する1月20日以降、ウクライナはこれまで以上に、不利な状況に陥る可能性があるためだ」 トランプ氏は、ウクライナに対する米国の支援規模を繰り返し批判。戦争を迅速に終わらせると約束しているが、方法については明らかにしていない。トランプ氏の広報担当者は、コメントの要請にすぐには応じなかった。