超厳しいが「エモい」文章読本...3行で撃たれても、書きたくなるひとが続出している理由
<文章は「誰でも」「簡単に」書けるわけがない、と気づいているあなたへ。しかし、書ければ「人生が豊かになる」とエールを送ってくれる本を紹介>
「誰でも書ける」「すぐに書ける」「簡単に書ける」と謳う文章セミナーや文章術の実用書市場が飽和状態だ。仕事で文章を書く人から、文章で自己表現したい人まで、「うまい文章」を書けるようになりたい人は多く、ライターになりたい人も増えている。 ●「4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男」の腕立て伏せを見る しかし、ありがちなセミナーや実用書の惹句のように文章は「誰でも」「すぐに」「簡単に」書けるものなのか。文章で真剣に何かを伝えようとしたことがある人は、すぐに気づくだろう。文章を書くことが簡単なわけがない。【ニューズウィーク日本版ウェブ編集部】 <「書く」人たちの口コミで広がりロングセラーに> 自分のなかに、どうしても解決できない、しかし解決しないと前に進めない問いがある。その問いに答えようと試みるのが、究極的には〈書く〉ということの本質だ。【第24発 書く、とは(302ページ)】 朝日新聞記者で作家の近藤康太郎氏による文章読本『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』(CCCメディアハウス)の一節だ。 2020年末の発売以降、プロのライターや記者、書く力を付けたい人たちの反響を呼び、出版社の経営者が編集者に勧めた例も複数報告されている。「いい文章を書くための文章技巧25発」で構成され、書き出しの三行、起承転結、語彙、一人称、文体、リズム、禁則事項他、1冊で必要十分なノウハウを網羅する。 レッドオーシャンの文章術市場において、本書がロングセラーとして定着した理由は、数多の本と決定的に違う2つの特徴にある。 <文章に対する厳しいが真摯な姿勢に共感> 1つは書くことに対して決して甘いことを言わない、著者のストイックな姿勢だ。厳しいが、書くことに対してどこまでも真摯であろうとする熱意が読者に伝播し、読み終わる頃には不思議と何か書いてみたくなるのである。 著者によると、〈書く〉とは〈考える〉ことだ。〈考える〉ためには、毎日を〈善く生きる〉必要がある。人生を精いっぱい生き切ることで、経験する事象や己について考え抜き、自分の知らなかった自分を発見する。 歩くこと。見ること。なんでもいい。小さなことでいい。なにか書いてみる。生きてみることだ。【おわりに 一九八七年秋――ハート・オブ・ダークネス(314ページ)】 そして、生き切るためには、読み、学び、筆を磨き、鍛錬しなくてはならない(編集部注:方法は本に詳述されている)。では、考え抜くとは具体的に、どういうことだろう。本書より、ごく初歩的な文章技術を例に挙げる。