#生涯子供なし 日本政府は本気で子供を増やしたいのか?
政策決定者に欠ける生活感
保守的な思想の自民党政権だけが問題というわけでもない。 筆者は民主党政権時代に日本経済新聞社政治部に所属し、当時の子育てや女性政策を取材していた。マニュフェストに「選択的夫婦別姓」などを掲げリベラルな印象を与える同政権だったが、現場の取材ではその実現に向けた機運は感じられなかった。 自民党との折衝で子ども手当に所得制限をかけることになったときに、「社会で子供を育てる」という理念に反するという信念に基づいて反対した議員はわずかだった。 民主党のある男性議員は筆者の前で、「子育ては親がするものでしょ」と冷めた見方を示していた。幼稚園と保育園の一体化も先送りした。 税制改正の際に、女性の働き方に対して中立ではない「配偶者控除」を見直そうと提案する議員もほとんどいなかった。 税制改正のメンバーだったある女性議員は筆者に「言える雰囲気がない」と漏らした。 子育て環境や男女平等の推進に問題意識を持っているのは一部の女性議員に限られ、多くの男性議員は党内外の権力闘争に明け暮れていた。 「女性が家で子育てすればよい」とまで言う議員は少なくても、苦しんでいる人々の現状を変えるため、積極的に何かをするというほどでもないという議員が多いという感触を覚えた。 日本の待機児童問題を大きく動かす起点となった「保育園落ちた日本死ね」のブログを民主党の山尾志桜里議員(当時)が取り上げたのは、野党になった2016年だ。 家事や育児を実際に担ったことがない男性議員が圧倒的に多い日本では、政党を問わず、生活をどう改善していくか、その先にどのような国の形があるのか、という視点が欠けているのが現実だ。