築150年の空き家再生、飲食店・民宿へ 福島・会津若松、市街化調整区域で初
福島県会津若松市の市街化調整区域にある空き家が、飲食店兼民宿に生まれ変わる。これまでは規制で用途変更ができなかったが、県が8月に審査基準を改正したため、可能になった。「自然豊かな土地柄を生かして落ち着いた雰囲気の店をつくりたい」。改正後初めてのケースで、事業者は意欲を燃やしている。 山や畑など、豊かな自然が広がる会津若松市河東町八田の空き家で、ソバや麦などを生産販売するタナカファーム社長の田中利幸さん(68)は明るい未来を描く。「空き家を活用し、地域活性化や雇用創出につなげることができる」。熱い思いが言葉になる。 空き家は広さ約2千平方メートル、築約150年の古民家。屋根部分などを改修し、室内にはいろりを設置するなど、昔ながらの雰囲気を味わえる空間に仕上げる予定だ。「広い土地と昔ながらの雰囲気が残る建物や蔵が良い」と感じている。
タナカファームが空き家を購入したのは約3年前。当初から飲食店兼民宿に変更する構想はあったが、規制の「壁」が立ちはだかった。当時の基準では市街化調整区域の空き家を事業用建築物に用途変更できなかったため、申請しても許可されなかった。だが審査基準が改正され、用途変更を申請。11月の県開発審査会で承認され、今月16日に市から許可された。「空き家の多い農村部で活用法が増えることは重要なこと」。田中さんは喜ぶ。 改修した後に計画する飲食店では、地元で栽培したソバや農産物を使った料理の提供を予定している。空き家のある会津若松市河東町はソバの栽培が盛んな地域。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で下がったソバの販売価格が今も戻らず、苦悩するソバ農家の一助になることも思い描いている。民宿では周辺のソバ畑の農業体験なども計画している。 田中さんらは現在、2026年春の開業を目指して準備を進めている。「この地域だからできる特徴ある店にし、店を通じて地元農家も盛り上げていきたい」。基準改正によって新たに生まれた空き家活用機会を好機と捉え、空き家を、地域を、農家を再生していく。(八巻雪乃)