【公演レポート】堤真一・瀬戸康史・大東駿介・浅野和之が“自分として今を生きること”に迫る「A Number」「What If If Only」開幕
「Bunkamura Production 2024 DISCOVER WORLD THEATRE vol.14『A Numberー数』『What If If Onlyーもしも もしせめて』」が、本日9月10日に東京・世田谷パブリックシアターで開幕する。これに先駆け昨日9日、初日前会見と公開ゲネプロが行われた。 【舞台写真】堤真一演じる父親と、瀬戸康史演じるクローン人間の息子。 DISCOVER WORLD THEATRE(以下DWT)は、シアターコクーンが海外クリエイターとタッグを組むシリーズ。第14弾となる今回は、DWTで「るつぼ」「民衆の敵」「ウェンディ&ピーターパン」を演出してきたジョナサン・マンビィが、劇作家キャリル・チャーチルの作品を2本立てで立ち上げる。「A Number」に堤真一と瀬戸康史、「What If If Only」に大東駿介、浅野和之らが出演する。 本公演では、上演時間約20分の「What If If Only」、休憩を挟み、上演時間1時間強の「A Number」が上演される。2作品ともスタート時には舞台中央にボックスが設置され、幕開けと共にボックスが天井に上ると、中に隠れていたアクティングエリアが登場。「What If If Only」ではダイニングキッチン、「A Number」ではリビング風の部屋が現れる。またボックス外には、暗闇に小さな箱がいくつも吊り下げられ、舞台全体で宇宙のような幻想的空間が作られている。劇中の場面転換時はボックスが降りてきて、ボックス側面に映像や模様が投影された。 「What If If Only」では、愛する人を失い苦しむ“某氏”を大東、“未来”と“現在”を浅野、“幼き未来”をポピエルマレック健太朗と涌澤昊生がWキャストで演じる。愛する人に先立たれた“某氏”は悲しみに暮れ、愛する人が戻ってくるよう懇願するが、代わりに現れたのは、起こらなかった“未来”の亡霊で……。浅野がいたずら好きな女性のように演じる“未来”をはじめ、“某氏”の家には、“未来たち”、“現在”、“幼き未来”が順にやって来る。プロジェクションも駆使される本作では、彼らの訪問によって拒絶から受容へ向かう“某氏”の悲しみの変化が、ファンタジックに描かれた。 続く「A Number」の舞台は、人間のクローンを作ることができる近未来。ある日、自分に複数のクローンがいると知ってショックを受けたバーナードは、父親のソルターを問い詰める。ソルターは「死んだ息子を取り戻すためにクローンを作った」と話すが、別の日、すべてのクローンの元であり、ソルターが手放した実の息子が現れて……。息子のクローンを作ったソルター役の堤は、罪悪感から自己保身の言葉やうそを重ね、さらに信用を失っていくダメな父親を好演。ソルターが発する言葉は真実かうそかもあいまいだが、堤は仕草や視線の動かし方で、ソルターなりの思考や愛情を浮かび上がらせる。瀬戸は、乱暴で精神的に不安定なオリジナルのバーナード(B1)、苦悩を抱えるクローン人間のバーナード(B2)、明るくて普通なマイケル・ブラックという、外見上そっくりな3人の息子を、話し方や態度などを巧みに変えて演じ分け、それぞれ異なる父への感情を表出させた。 ゲネプロ前に行われた会見には、堤、瀬戸、大東、浅野が出席。堤は「『A Number』の台本を読んだとき、ソルターを『おろかなおっさんやな』と思った」と述べ、「クローンがテーマの作品というより、『自分とは何だ』だったり、過去に犯した罪がなぜ許されないのかだったり、人間としての課題が浮き上がる作品だと思います。肩ひじ張らずに観に来ていただけたら」と呼びかける。瀬戸は「『A Number』は親子の物語ですが、いろいろな愛の形があるんだなと。言葉の裏に何を伝えたいのかを“感じる”ことが、今回のお芝居では大事だと思っている」と話し、「苦しい作品ではありますが、もしかしたら最後には自分を好きになれる、自分に優しくなれる作品かもしれない」と語った。 大東は、「What If If Only」を「大切な人を失った悲しみの中で過ごす、“短い永遠”のような時間を描くお芝居」と表現し、「2作品を通して、“自分として今を生きる”ということが見えてくるのではないかな。ぜひ劇場で体験していただきたい」と期待を込める。浅野は、自身の役柄について「登場の仕方が見どころです」とアピールし、「(『「What If If Only』は)たった20分しかありませんので、観劇中に寝たらおしまいです(笑)。頭を使って観ようとするより、“感じて”いただけたら」と観客へメッセージを送った。 会見では、作品作りの過程で印象的だった出来事についての話題も。堤は「『A Number』はクローンを扱う作品ということで、(稽古の一環で)大学の遺伝子工学の講義を受けました」と明かし、大東も「『What If If Only』は悲しみがテーマの作品なので、僕たちは心理学の講義を受けました。遺伝子工学の講義も併せて聞いてみると『What If If Only』ともつながる部分があった。チャーチルのこの2作品が同時上演されるのは世界で初めてだそうですが、この2作品が寄り添うようにあることに、2つの講義を通じて気付けたのが面白い」と振り返った。 2作品は上演時間の違いから、稽古の進捗にも差があったという。瀬戸は「『これから堤さんと立ち稽古をがんばろう』という日に、だいとぅー(大東)が『俺たちはもう通しなんで』という言葉をかけて去っていきました。そこからの焦りが半端なかったです」と明かし、大東は「ごめんな(笑)」と目配せする。一方、浅野は「稽古を始める前に、みんなでバレーボールをやったのが一番楽しかったですね。芝居にとっても、ためになりました」とおちゃめに回答し、場の空気を和ませた。 全体の上演時間は、休憩20分を含む約2時間。東京公演は9月29日まで。その後、10月4日から7日まで大阪・森ノ宮ピロティホール、12日から14日まで福岡・キャナルシティ劇場で公演が行われる。 ■ Bunkamura Production 2024 DISCOVER WORLD THEATRE vol.14「A Numberー数」「What If If Onlyーもしも もしせめて」 2024年9月10日(火)~2024年9月29日(日) 東京都 世田谷パブリックシアター 2024年10月4日(金)~2024年10月7日(月) 大阪府 森ノ宮ピロティホール 2024年10月12日(土)~2024年~10月14日(月・祝) 福岡県 キャナルシティ劇場 □ スタッフ 作:キャリル・チャーチル 翻訳:広田敦郎 演出:ジョナサン・マンビィ □ 出演 「A Numberー数」 堤真一 / 瀬戸康史 「What If If Onlyーもしも もしせめて」 大東駿介 / 浅野和之 / ポピエルマレック健太朗 / 涌澤昊生 ※ポピエルマレック健太朗と涌澤昊生はWキャスト。