「サッカー界のスタッフ特化型求人サービス」元コンサルが挑戦する新しいスポーツビジネス
スタートしたスタッフのマッチングサービス
サッカー界に多様な立場から関わってきた深澤氏。改めて今までのキャリアを振り返り、自分がサッカー界にできることを考える中で浮かんだアイデアが、スタッフの人材市場だった。 「サッカークラブの場合、強化部長やGM、または育成部門を統括する責任者であるアカデミーダイレクターの属人的なネットワークの中で採用があり、評価が行われ、報酬が決まっていく。一般企業で働くなかでサッカー界と一般のビジネスの世界とでは人材市場にかなり違いがあると思い始め、サッカー界の人材市場をオープンにしたいという考えに至りました」 そして2023年11月に、スタッフのマッチングサービスである「Sporpath(スポーパス)」をスタート。内容としては、一般社会において転職活動の際に使用するマッチングサービスをイメージすると分かりやすい。 「もちろん人とのつながりや関係性は大事なんですけれど、日本サッカーがより発展するには、プロフェッショナルとして本質的な力が評価され、それが仕事に繋がり、報酬に反映されるというオープンな競争環境が必要。そのためにはマーケットがないといけないと考えました」 始動から約半年経ち、Sporpathを通じて求人募集をするクラブ、サッカー界で働きたい人材ともに増加を続けている。 「おかげさまで順調に登録者数は増えており、活用したいという声をいただいています。特に若い方はJリーグのクラブに入る方法が分からないというケースをよく耳にしました」 一方で、これまでになかった仕組みなだけに、クラブによっては導入をためらう意見も聞かれる。 「強化担当者や人事責任者は、新しいことに積極的な方と保守的な方とで分かれる印象があります。Sporpathがあることで自クラブの人材が外へ出ることを助長してしまうという懸念や、ネットワークを武器とするGMやスポーツダイレクターの価値が落ちてしまうのではという懸念を聞いたりもします。また、Sporpathは基本的に成功報酬で、採用が決まったら(クラブから)手数料をいただくというビジネスモデルを現在採用していますが、そこに対する捉え方もクラブによって異なる。一般企業は転職の際にはエージェントに支払うし、選手の移籍もエージェントに支払うから費用をかけるべきだよねという方と、今お金をかけないで採用できているからという方とで温度感に差があるなと思いますね」 多くのクラブに受け入れてもらうのは容易ではないが、身近な場所での実例がある。岳南FモスペリオのコーチングスタッフもSporpathを通して採用した。現在、クラブ初挑戦の東海社会人サッカーリーグ1部で中位にいるのだから、十分な成果といえるだろう。