【ベトナム】【北部水害】工業団地ディープC復旧急ぐ 電力は回復、フル操業まで数カ月
ベトナム北部ハイフォン市3カ所とクアンニン省2カ所で展開するディープシー(DEEP C)工業団地が、今月上旬に直撃を受けた台風11号(国際名:ヤギ)の被害からの復旧を急ピッチで進めている。運営会社のブルーノ・ジャスパート代表は13日、NNAなどに対して、台風で途絶した団地内のインフラはハイフォン市内では全て復旧したと説明。送電網や通信網の地下化などの措置が功を奏したとして、生産拠点としてのディープシーの安全性を強調した。入居企業の一部は「復旧に数カ月かかる」ほどの被害を受けたが、サプライチェーン(供給網)全体への影響は短期的なものにとどまるとの見方を示した。 ディープシーでは台風11号による人的被害はなかったが、すさまじい強風で大型シャッターの85%が破損した。工場建屋が損壊し、雨が屋内に吹き込んだ企業も多い。ブルーノ氏は「テナントへの影響は非常に大きい」と説明。被害総額は算定中だが、「一部の企業の被害は相当深刻だ。数千万米ドル(1,000万米ドル=約14億円)単位では収まらないだろう」との見方を示した。大きな被害を受けた工場には日系も含まれているという。 ■「100年に1度」に対応 ハイフォン市のディープシーではインフラは復旧している。送電網や通信網の地下化などの災害対策を進めていたため被害を抑えられたからだ。 特にナムディンブー半島南側で2018年に販売を開始したディープCハイフォン2は100年に1度の規模の台風を想定した設計を取り入れた結果、浸水は起きなかった。ブルーノ氏は「われわれの設計手法の正しさが証明された。ディープシーに入居する顧客は安全だと断言できる」と胸を張った。 ただし、開発途上で送電線を地下化できていなかったクアンニン省側の団地では電力供給が再開されておらず、稼働前の工場の建設工事などが停止している。ブルーノ氏は倒壊している電柱が多数あるとして、電力の復旧には1週間程度かかるとの見通しを示した。 ハイフォン側のディープシー内の工場の稼働率について、ブルーノ氏は「団地内の電力消費量は13日時点で平常の5割弱」と説明。電力使用量は各工場により異なるが、平常時の3割にまで低下していた電力復旧直後と比べると工場の再開が進んでいるとの見方を示した。 同氏は電力消費量は今週中に7割程度に戻る見通しも示したが、「完全に需要が戻るには数カ月かかる」と予測した。屋根が吹き飛んだテナントの建屋修復や破損した生産設備の修繕には時間がかかるという。それでも「災害が多い日本や台湾系企業は高い安全基準で工場を建てている」として、早期に復旧しサプライチェーンへの影響は短期間でとどまるとの期待を表明した。 ■日系の新規進出も予定 ディープシー工業団地は、ベルギーの投資会社とハイフォン市の合弁会社として1997年に事業を開始した。開発面積はハイフォン港に隣接する3,400ヘクタール。 進出企業のうち日系はブリヂストン、信越化学工業、IHI、ENEOS(エネオス)など約20社。工業団地内にある電力事業者には、東京電力ホールディングス傘下の東京電力パワーグリッド(東電PG)が出資している。日本からの投資誘致の推進へ向けて、日本企業数社とも協力関係を結んでいる。 ブルーノ氏は「円安の影響もあり日本企業の進出は減速しているが、向こう1年で2~3社は新たに誘致できる見込みだ」と語った。 (本連載では、北部に多大な被害をもたらした台風11号とその後の熱帯低気圧からの復旧に向けた動きを追います。掲載不定期)