五島で“空飛ぶ船”計画 シンガポール企業がデモフライト検討 実用化へ可能性探る
揚力を利用した地面効果翼機(WIG)の日本市場参入を目指しているシンガポールの総合エンジニアリング企業「シンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリング(STエンジニアリング)」が、五島市で導入に向けた可能性を探っていることが2日までに分かった。 同社などが実用化を目指しているWIGは、地表や水面近くを飛行することで生じる揚力を利用して効率的に移動し、“空飛ぶ船”とも呼ばれている。従来の船舶よりも少ないエネルギーで高速移動でき、燃料コストの削減も期待されている。 同社はシンガポールを拠点に航空機のメンテナンス、修理、整備や防衛システムの開発などを手がけるグローバル企業。工学技術を駆使し、航空宇宙、電子機器、土地開発、海上など幅広い分野でサービスを提供している。 同社が開発した「AirFish(エアフィッシュ)」は全長17メートル、全高3・5メートル、幅15メートル。乗員を含めて最大10人が搭乗可能。時速約80キロで運航する従来の一般的な高速船に対し、最大時速約204キロを出せる。 国土交通省によると、WIGについては国際海事機関(IMO)がガイドラインを定めているが、各国での法整備はこれから。運航に向けた詳細なルール作りや、飛行訓練、操縦資格、安全管理などの課題整理が進んでいる。 同社は2026年を目標に本国でデモ運航を実施。日本市場への参入を視野に、離島という地理的特性や観光利用、既存の高速船との比較検証が可能な五島市を実証地として検討中だ。昨年7月、同社担当者が五島入りし、市の担当者と意見交換。福江港などを視察し機体の入港や発着が可能かどうかなどを確認した。 将来、実証にとどまらず五島での就航が実現する可能性もあり、同市は「観光や公共交通、防災・救急時の活用も想定され、市として協力したい」と期待。同社は「地域交通の選択肢として、日本で実用化を目指したい」としている。