エリーゼを「徹底」レストモッド! アナログ・オートモーティブ・スーパースポーツへ試乗 ローバーKは維持
ホットカムの効果が現れる5000rpm
ケータハム・セブンよりキャビンは広く、居心地は良い。スイッチ類の一部は省かれ、シンプルな運転環境は一層突き詰められている。 1.8Lエンジンは、生々しいサウンドを臆せず放つ。軽快で繊細だったエリーゼ S1は、シリアスでドラマチックなスポーツカーとして再生を遂げている。 5速MTも改良され、レバーの動きは重めだが、滑らかで正確にスロットへ導ける。アクセルペダルとステアリングホイールは、僅かに重さがプラス。右足には、スロットルボディと直接繋がったようなダイレクト感。正確で的確な操作が必要になる。 Kシリーズ・ユニットの癖を思い出しつつ、しっかり温めて、213psを引き出す準備を整える。エンジン音が硬質に変わり、怒号とともに鋭く回転上昇するようになる。5000rpmでホットカムの効果が現れ、本当の面白さへ惹き込まれる。 アナログ・オートモーティブ社は、強力なユニットへの置換も可能ながら、当初のメカニズムや哲学を残すことを選んだそうだ。最新のスーパーカーに乗り慣れているなら、加速力に驚くことはないかもしれない。しかし、刺激的で不足なく速い。 ドライバーとの一体感は半端ない。クルマへの信頼を深め、積極的に操るほど、体験が深まっていく。シャシーの水準は極めて高度で、400ps程度は問題なく受け止めるだろう。しかし、Kシリーズ・ユニットの力を最後まで絞り出すという喜びは甚大だ。
本来とは異なる楽しさ 高負荷時に顕になる魅力
高められた速度域に、反応が鋭く確かな回頭性。安定感のある姿勢制御。強力なブレーキ。タイヤが温まった時の相当なメカニカルグリップが、魅力の根底にある。 ドライバーと息を合わせるような、オリジナルのエリーゼ S1とは異なる楽しさでもある。一般道での流暢さや繊細さは犠牲になっているものの、乗り心地は硬すぎない。耳栓をした方が良い音量だとしても、ドライバーへの要求度は高くない。 同時に、動的な能力は遥かに上昇している。コーナリングスピードは大幅に高く、サーキットですべてを解き放って欲しいと訴えてもくる。 軽く湿ったアスファルトでは、ステアリングホイールへの鮮明なフィードバックが頼もしい。舗装が荒れた区間でも、ガタガタ・ミシミシと音振が届くことはない。 日常的な速度域では、欲求不満が貯まるような感覚があることは事実。相当な速度域へ迫らなければ、没入しにくいかもしれない。 だが、6000rpmまで引っ張れば、スーパースポーツの真価が現れる。タイヤとサスペンションへ必要な負荷を加えることで、秘めた魅力が顕になる。サーキットでも満ち足りれるが、そこへ向かう道でも気持ちを刺激し、深く報いてくれる。