いよいよ最終週突入! 朝ドラ「虎に翼」異例ヒットとなった“2つの理由”ーー新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった
なにごとも「ゆるし」が大事とはいうものの、それは理想論に過ぎず、「許さず恨む権利がある」という主人公はなかなか肝が据わっている。 ■「はて?」のたびに、実社会での問題が浮かび上がる 契約結婚は、「逃げ恥」(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』)ブームの影響もあってか、令和のいま浸透しているし、夫婦別姓も目下、議論されている注目案件である。子育ても家事も、やってくれる人にやってもらうサービスがビジネスとして成り立っている。
これまでいかがなものかと思われたことが、いや、やってみてもいいのではないか、やってみたら意外といけると、新たな門戸はどんどん開いているのが令和である。 むしろ、これまであまりにも人間を型にはめすぎてきたのではないか。寅子が「はて?」「はて?」と別の視点を提示していくたびに、実社会での問題がくっきりと浮かび上がってくる。だからこそ、これまでの朝ドラは品行方正過ぎて魅力を感じなかったという層にも受けたのだろう。
それこそ、明るく元気でさわやかで良識的な朝ドラヒロインみたいであれ、と型にはめられてきた世の女性たちにとって、そこからはみ出た型破りな寅子はしてやったりなのである。 米津玄師の主題歌『さよーならまたいつか!』の歌詞には「空に唾を吐く」とか「知らねえけれど」とか乱暴な言葉が出てきて、これもまたこれまでの朝ドラらしくなかった。 寅子のモデルで、日本初の女性裁判官・三淵嘉子さんはアッパークラスの人で、銀行員の家に生まれ、法曹界に女性が少なかった時代に法律家となり、最高裁長官の息子と再婚し、日本ではじめて家庭裁判所の所長になった人で、資料を見ると、「空に唾を吐いたり」「知らねえけれど」なんて言ったり決してしないであろう上品な人物に見える。
おそらく、あえて逆をいったところが、ドラマが支持される要因のひとつであろうか。 ■ヒットしたもう一つの「重要ポイント」 ただ、主人公が型破りなだけだったら、『虎に翼』はこれほどの話題作には成り得なかったであろう。 型破りな主人公が関わる事件は史実に忠実で、帝人事件を模した「共亜事件」にはじまって、朝鮮人差別の問題から、原爆は国際法に違反すると判じた原爆裁判、尊属殺人、少年法の改正、安保闘争、ブルーパージ等、昭和の日本を揺るがした事件を扱っている。