「イスラエルの9.11」――イスラエル、そしてアメリカは「テロとの戦い」の過ちを繰り返すのか?
今回のテロについて「これは私たちの911だ。これは戦争だ」と強調したマイケル・ヘルツォーク駐米イスラエル大使(Wikimediaより)
10月7日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織 ハマスによるイスラエルへの越境攻撃 で、外国人を含むイスラエルの民間人約1200名が犠牲となり、200名超が人質とされた。イスラエルのネタニヤフ政権は即座に、ガザでの大規模な空爆と地上戦に乗り出し、12月はじめの数字で1万5000人を超えるパレスチナ市民が犠牲になっている。12月1日朝までの7日間の休戦を経て、ネタニヤフ政権は改めて、ハマスの壊滅を成し遂げるまで停戦はしない意向を表明した。 「10.7」がイスラエル社会にもたらした衝撃、そしてその後の軍事行動の正当性を国際社会に対し、とりわけアメリカに対して訴えかける際、イスラエル政府は、「 イスラエルにとっての9.11 」という表現を用いてきた。22年前の2001年9月11日、アメリカを襲った同時多発テロ事件の記憶を呼び起こし、アメリカ国民の共感を呼び覚まそうとする狙いだ。 テロの翌日、米公共放送PBSに登場したマイケル・ヘルツォーク駐米イスラエル大使は、「これは私たちの911だ。これは戦争だ」と強調した。番組のアンカーが、前回ガザで軍事作戦が展開された際、国連発表で500人以上の子どもを含む1400人以上のパレスチナ市民が犠牲となったことをあげながら、軍事作戦に市民が巻き込まれることに懸念を示すと、ヘルツォークはこうまくし立てた。「私はこれらの(パレスチナ市民の犠牲を示す)数字について非常に慎重でありたい……(これらの数字は)ガザのパレスチナ人の情報源に基づいている。その中には、市民への殺意を持った何百人ものテロリストも含まれている」 1 。
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三牧聖子