セシールのEC立ち上げなどに携わった大西氏が語る市況感+EC人材が成長するための行動&組織作りとは?
現在、クライアントはメーカー、小売、卸売、ITベンダーと幅広く、案件もECに限らず、DXやOMO、戦略立案や課題解決プロジェクトなど広い。このほか、通販事業担当者の検定事業を手がけているD2Cエキスパート協会(旧通販エキスパート協会)の理事も務めている。
大西氏が語る、これまでとこれからのEC市況
■ ますますオンとオフの垣根がない時代に ――目まぐるしく変わる近年のEC業界。今後のトピックスとして大西さんが注目していることを教えてほしい。 大西氏:消費行動の変化への対応力だ。実店舗とECの両方を展開している事業者では、顧客による店舗回帰が起きている。ただ、店舗回帰が進むなかでも、オンライン販売が堅調に推移していく企業も多く出てくるだろう。一度オンラインの良さを体験した顧客へのフォローやサポートをこれまで以上に厚くし、店舗とオンラインを上手に使っていただくことに注力する企業が増えるからだ。
オンオフどちらも気持ちよく利用できる環境を構築し、チャネル間を自由にクロスする顧客が増え、結果的にLTVが伸びていくことになるだろう。
大西氏:先だって、シンガポールに行った際、ローカルアパレルの店舗をいくつか見て回ったが、店舗の入口やウィンドウなどにオンラインストアのアドレスを入れていたり、オンラインのアピールをしているお店をよく目にした。 また、店舗スタッフが積極的に「店舗になくてオンラインにあるものもあるのでオンライン見てね」と言ってきたりするシーンも見た。店舗の中に「Tap Try Buy」と掲げているブランドもある。 このようにオンとオフをうまく使ってもらおうとしている姿勢がうかがえる。今後はますます垣根なき世界が当たり前になっていく。
大西氏が見る“ECで活躍できる人”
■ オンラインとオフライン両方の感度をもつ人材 ――これまでの経歴や近年のECにおけるトレンド、企業動向を踏まえ、今後はどのような人材が求められていくのかを教えてほしい。 大西氏:私が経験できていないことを経験できている人がECに必要な人材と考えている。私はキャリアのなかで実店舗の接客経験が圧倒的に不足。売り場の責任者などを務めた経験がない。たとえば、実店舗の責任者を経験した人がECの世界に飛び込んできてくれるのはとても有意義なことだろう。そのような人物は、店頭でやってきた施策をオンラインの施策と比較し、正しく咀嚼(そしゃく)できると思う。店頭スタッフを経験していないと「自分が店頭でやっていたこのことが、オンラインでいうとこの施策に該当する」という認識ができない。 たとえば「店頭で顧客に似合う服を提案することは、オンラインに置き換えるとどういうことか」といったことや「店頭とオンラインのそれぞれの得意なことと不得意なこと」などを頭のなかで変換できる人がECで活躍できるのではないかと考える。 つまり、オンラインとオフラインの「売り方」をどちらも理解していると、優れたEC人材になれるだろう。店舗を経験した人がECも経験して、組織内で上部のポジションに立つと、顧客にとってより良い体験が設計できるようになるはずだ。 ――「EC業界で伸びる人」ならではの特徴や、EC担当者が行動したほうがよいことを教えてほしい。 大西氏:「まねぶ」(真似る+学ぶ)ができる人。他社や他の人の取り組みを見て、自社や自分の行動に置き換えたときに「見習いたい」「取り入れたい」と思うことを学んで自社流に変換して実行できる人が伸びる。自分自身もこの精神を持つようにしてきた。 このほかの要素としては、ECと言えどリアルなコミュニケーションが好きな人。対人コミュニケーションが好きな人は、顧客はもちろん、取引先や社内関係者と良好な関係を構築することもできるので、結果として周囲からも頼られ、伸びていく。 ■ 成長のカギは“幅広く他流試合をすること” ――企業のEC部門で成長中の担当者に一言。 大西氏:同業のなかで同職種で交流を持ったり、異業種で同職種の人たちと交流を持つことはとても重要だ。アンテナを高く張ってどんどん交流してほしい。会社は異なれど同じ課題を持つ者同士、学ぶことが多い。自分のことと置き換えると気付きもたくさんある。積極的にネットワーキングすることで刺激も受けられるし、自分たちがどうあるべきかを考える機会にもなる。 自分が担当している業界・業種だけに見識を狭めてしまうと、深い知見やノウハウはたまるが、変化する時代のなかで、違うアプローチの仕方を学びにくくなる。 社外のイベントへの登壇など、外部に出て自分や自社の取り組みを話すことは「自分のやっていくことを整理する」「人にわかりやすく説明する」というインプット・アウトプットのスキルが上がるので絶対にやった方が良い。