便利だけど弊害だらけの「子どもにスマホ」各家庭ではなく、社会全体で対策を考えなくては!
ロンドンに住むイラストレータークラーク志織さんの連載「イギリスのSDGs事情ってどうなのさ?」。イギリスの人たちがSDGsの理念を日々の暮らしにどう取り入れているのかを、パンチの効いた軽妙なタッチのイラストつきでレポート! 笑いと学びのつまったコミックエッセイです。 【イラスト】スマホ依存。私たちはなぜこんなにも情報が気になって仕方ないのか 今回のテーマは、ヘイトやいじめ、グルーミングの原因ともなりうるだけでなく、依存症にもなりかねない。さまざまな影響が問題視される「スマホが子どもに与える弊害についての対策」。家庭内での対策はもちろん大事。だけど、もっともっと大きな枠組みで取り組んでいくべき課題では?
子どもにスマホ。7つの弊害とは
ロンドンで7歳の息子を育てる筆者ですが、最近、保護者の間で「スマートフォン・フリー」「タブレット・フリー」のような言葉を頻繁に聞くようになりました。宿題をタブレットでさせる小学校もあるそうで、「紙と鉛筆でやらせたほうがいいと思うのだけど......」とモヤモヤしている保護者が身近にいます。 スマートフォン(以下、スマホ)が出現して以来、すっかり子どもたちの日常に溶け込むタブレット端末。イギリスでは12歳の子どものなんと97%がスマホを所有しているというデータも!(※1)同時に、スマホやiPad、オンラインゲームなどに幼いうちから長時間触れることへの深刻な弊害がニュースで取り上げられることが増えたようにも思います。 そんな中、この弊害について精力的に声をあげる人たちがいます。「Smartphone Free Childhood」という団体が巻き起こした草の根ムーブメントです。 2024年2月、「子どもにスマホを買い与えるのは、せめて16歳になるまで待ちたい」という2人の母親が互いをサポートし合うために始めたワッツアップ(日本でいう「LINE」のようなもの)グループで、参加者のひとりが、自身のインスタグラムに投稿したことも相まって、数週間のうちにワッツアップやインスタグラムのコミュニティ参加者が10万人ほど集まるという巨大キャンペーンに!BBCなどのニュース番組で取り上げられたり、首相官邸に招かれ議論をするほどになったそうです。 同団体が主張する「子どものうちから日常的にスマホを使用すること」の主なデメリットは、下記の7つ。 1)ポルノや暴力などの有害なコンテンツにふれる可能性 2)スマホ依存への危険性 3)学業の妨げになる 4)オンライングルーミングのターゲットになる危険性 5)オンライン上でのいじめ 6)鬱や不安障害などのメンタルヘルスの悪化 7)子ども時代に経験するべきリアルな世界での体験の喪失 同団体の公式ウェブサイトによると、多くの若者がスマホを持ち始めた2010年頃からうつ病、不安神経症、自殺が増加していたり、初めてスマホを手にした年齢が若いほど、メンタルヘルスが悪化しやすいというデータもあるといいます。(※2) また、タブレットやスクリーンではなく、ペンや鉛筆で紙に書いたほうが、学習効率がいいことがわかっているとの調査結果も。本も同じく、電子書籍より紙のほうがより内容を理解し覚えていられる傾向にあるそうなのです。(※2) ※1 参照:https://www.theguardian.com/technology/2024/sep/23/children-who-dont-have-smartphones ※2 参考:https://www.forbes.com/sites/helenleebouygues/2019/12/12/new-data-students-who-read-on-tablets-score-poorly-in-reading/