「カルピス」の包装紙、地下鉄ポスター…日本初のグラフィックデザイナー杉浦非水の仕事に迫る
日本初のグラフィックデザイナーといわれる杉浦非水(1876~1965)の作品展が、大分県玖珠町の久留島武彦記念館で開かれている。1919年に発売された日本初の乳酸菌飲料「カルピス」の包装紙や、東京でアジア初の地下鉄(上野-浅草)が27年に開通した時のポスター、児童文学者久留島武彦の児童書に描いた挿絵など、杉浦が手がけた作品約100点を展示している。久留島生誕150年記念企画の一つ。12月22日まで。 【写真多数】カルピスの瓶の包装紙や、高校生以下の入場者に配られるメモ帳 日本画家を目指した杉浦は東京美術学校入学後、洋画家黒田清輝に欧風図案などを習い、デザイナーに転向した。01年の卒業後から、雑誌などで斬新なデザインを発表して話題を集めた。05年に入社した中央新聞社(東京)で久留島の同僚となり、久留島の著書の装丁や童話の挿絵を依頼されることが増えた。 本名は朝武(つとむ)で、非水は中央新聞社時代から使っている雅号。「非」「水」とも左右対称でデザイン性がある漢字。デザイナーが使う字として最適と考え雅号にしたという。 嘱託として勤務した三越呉服店(百貨店「三越」の前身)では、ポスターやPR誌のデザインを担当、企業イメージの創出に貢献した。大蔵省専売局=現日本たばこ産業(JT)=の嘱託としてタバコのパッケージデザインも手がけた。 中央新聞社の日曜付録として創刊され、久留島が編集を担当した週刊子ども新聞「ホーム」にも挿絵を描き続けた。子どもたちが紙相撲やスケートを楽しむ和やかなデザインだけでなく、地獄に落ちた悪人を鬼が巨大な鍋で煮ている様子を描いたおどろおどろしいデザインもある。館内にはこの挿絵をまとめた巨大なパネル(縦1・2メートル、横5・5メートル)が掲げられている。 発売から1世紀以上たった現在でもカルピスのイメージデザインとして使われている水玉模様の瓶の包装紙(複写)や、杉浦の代表作といわれる地下鉄上野-浅草間開通を祝うポスターも並ぶ。奥行きを強調した直線的な構図で、ホームに並ぶ人たちの服装が画面奥の和装から手前になるほど洋装へと変化し、時代の移り変わりを表現している。 久留島の児童書「三郎の飛行船」の装丁や「合點烏(がってんがらす)」に杉浦が描いた挿絵のほか、杉浦が原画を担当し、多色刷り木版画として仕立てた図案集「非水百花譜」の一部も展示されている。杉浦が80歳のとき久留島が死去したが、その時に久留島が好きだった梅の花を描いた掛け軸も並ぶ。金成妍(キムソンヨン)館長は「発表から100年以上たっても親しまれているデザインをつくった非水を、作品を通して知ってほしい」と来場を呼びかけている。 (渋田祐一)
久留島武彦と挿絵画家シリーズ3 杉浦非水展
午前9時半~午後4時半。月曜休館。町民150円、町民以外300円、高校生以下無料。高校生以下