来日間近のサミー・ヘイガーが語る、エディ・ヴァン・ヘイレンと築いたレガシー
「この男と一緒に世界制覇するんだと確信した」
ーヴァン・ヘイレンに加入することになって、あなたとエディの初のステージ共演は1985年9月22日、イリノイ州シャンペンで行われたチャリティ・イベント「ファーム・エイド」でした。どんなことを覚えていますか? “ファーム・エイド”はテレビで生放送されていたけど、俺がMCでつい「fxxkin’」と言ったら中継を一時停止されてしまったのを覚えている(苦笑)。いや、アメリカの農業従事者たちのための素晴らしいイベントだったし、ひとつの目的のために数多くのアーティストが集まった。その時点で俺がヴァン・ヘイレンでやることは決まっていたし、数回スタジオでジャムをやって、新曲も書き始めていたけど、ソロ・バンドで「ファーム・エイド」に出演することが決まっていた。それで最後にエディが上がってきて、レッド・ツェッペリンの「ロックン・ロール」をやったんだ。自分の人生で最もスペシャルな経験のひとつだった。エディと初めて同じステージに立って、10万人の大観衆の前でプレイしたんだからね! エディの横に立って、彼が自信に満ちて、信頼に足るミュージシャンだということが伝わってきた。その頃はまだ健康の問題もなかったし、パートナーとして活動していくことにスリルを感じたよ。 ーアメリカン・ロックのドリーム・コンビ誕生の宣言としては理想の舞台でしたね。 この男と一緒に世界制覇するんだと確信したし、永遠にチームが続くと考えていたよ。いつか終わるだなんて想像もしなかった。結婚するときに離婚のことを考えないのと同じだ。俺も1回離婚しているけど、まさかうまく行かなくなるとは思わなかった。その後に再婚して27、28年間一緒だし、2人の娘がいるけどね。離婚するカップルの多くがそうであるように、ヴァン・ヘイレンとの関係もバッド・エンディングで終わった。エディが亡くなる前に仲直りすることが出来たのを、神様に感謝しているよ。いつかまた一緒にプレイしたかったけど、それは実現出来なくなってしまった。だからせめて彼と一緒に生み出した音楽をプレイするツアーをやって、彼の人生と音楽のセレブレーションを行おうと考えたんだ。俺とマイケルがやるしかないんだ。アレックスはツアーに出る気がないようだし、デイヴには俺の曲を歌うことが出来ない。残っているのは俺たち2人だけなんだよ。 ー「The Best of All Worlds Tour」のツアー日程で発表されているのは日本公演までですが、今後の予定はどうなっていますか? 2025年にもツアーは続くでしょうか? 俺たち全員がこのツアーを楽しんでいるし、出来るだけ長くやりたいと考えているんだ。期限は設けず、4人のスケジュールが合う限り何年先でもやるつもりだよ。ジョーのソロとしてのツアーもあるから、調整が必要だけどね。2025年は5月と8月に空白がありそうなんで、そのとき北米とヨーロッパを回るかも知れない。ついこないだ北米を回ったばかりだけど、公演数を絞ったこともあって、何度も「自分の住んでいる町に来なかった!」とか文句を言われたんだ(苦笑)。ケニー・アロノフはジェイソンの代役というだけでなく、ロック界で屈指のパワー・ドラマーだ。しかも彼はセッション・プレイヤーとして鍛え上げられている。ジェイソンがツアーに参加出来ないと判って、彼に連絡して24時間以内にすべてのドラムス・パートを叩けるようになっていた。以前チキンフットのツアーでチャド・スミスが参加出来なくなったときも、ケニーに来てもらったことがあるんだ。ジェイソンはご家族の事情があって日本には行けないけど、ケニーはマジカルな仕事をしてくれるだろう。さらにバンドにはレイ・シッスルウェイトも同行する。キーボード、ギター、ボーカル……彼に出来ないことはない。バンドに厚みを加えてくれるんだ。 ーところで元メタリカのジェイソン・ニューステッドは今回のプロジェクトにどの程度関わっていたのですか? ああ、それはアレックスとデイヴが考えていた方のヴァン・ヘイレン・トリビュートだな。俺の方とは関係ない。ジェイソンは古くからの友人で、最高のナイス・ガイだ。彼がチキンフットみたいなバンドでもっと音楽シーンの前面に出てきたらいいのに、といつも考えているよ。ただ、俺の方のツアーは最初からマイケルがベースを弾くことになっていた。俺にとって最高の相棒だし、同じバンドにいた戦友だからね。アレックスとデイヴのどっちが言ったのか知らないけど、いくつもウサギの脳ミソ並の突飛なアイディアを耳にしたな。ジェイソンの件もそうだし、P!NK(ピンク)をシンガーに迎えるという話も聞いた。あまり怪しげなディスペンサリー(=大麻薬局)は使わない方がいい、とだけ言っておくよ。それが実現していないのは、誰かが「止めた方が良いよ」と忠告したのかも知れない。 ー通常のソロ・ツアーやザ・サークル、チキンフットなどでの活動予定はありますか? ジョーやマイケルのスケジュールの都合がつかなければ、別のメンバーとツアーをするかも知れない。でも、無理はしたくないんだ。ステージに上がったけど声が出ない……なんていうのは自分の長いキャリアを無にすることだし、ファンに対しても無礼なことだよ。自分が納得のいくレベルで歌えないようなら、最初からツアーは組むつもりはない。俺がステージに立つということは、ベストを提供するということなんだ。それが来年(2025年)まで続くことを祈っているよ。 ーあなたは1980年代、1990年代、2000年代、そして2019年の『Space Between』と、4つのディケイドで連続して全米チャートのTOP5入りを果たしていますが、今回のツアーのラインナップでスタジオ・アルバムを作ったら5つのディケイド制覇も実現しそうですね。 この4人でアルバムを作ったら絶対に凄いものが出来るし、ぜひ実現させたいね! もう既にジョーと新曲を書き始めて、3曲がほぼ仕上がっているんだ。ジョーとマイケルと作ったチキンフットの1stアルバム『チキンフット』(2009年)はモントローズの『ハード・ショック Montrose』(1973年)やヴァン・ヘイレンの『5150』(1986年)と並ぶ俺の代表作のひとつだ。彼らとだったら、新しい代表作を作れる予感がするよ。 ー“レッド・ロッカー”としての活動と並行してTV番組『Rock & Roll Road Trip』出演、レストラン・チェーンやテキーラ・ブランドの経営など、大忙しですね。 うん、どのビジネスも楽しみながらやっているんだ。でも今は何よりもツアーを楽しんでいるし、このバンドのライブ・パフォーアンスを誇りにしている。ヨーロッパ、オーストラリア、南米、アジア大陸……俺たちのショーを見たいと言ってくれるファンがいる場所だったら、どこにでも行きたいね。あとどれだけ出来るか分からないけど、ベストをキープ出来る限り突っ走り続けるつもりだ。若い頃は、自分が50代になってもロックンロールを歌っているなんて想像も出来なかったんだ。さすがに80歳になったら無理だろうと思っていたら、ザ・ローリング・ストーンズがやってのけている。日本にもあと何回かは行きたいんだ。まずは9月のツアーで、みんなでテキーラで乾杯だ! Sammy Hagar/サミー・ヘイガー The Best of All Worlds 2024 Tour ▼日時・会場 2024年 9月20日(金) 名古屋・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール 開場18:00/開演19:00 9月22日(日) 大阪・堂島リバーフォーラム 開場16:00/開演17:00 9月23日(月・休) 東京・有明アリーナ 開場17:00/開演18:30 ▼チケット料金(税込) <東京・名古屋公演> GOLD:35,000円 ※グッズ付き S席 :20,000円 A席 :19,000円 <大阪公演> GOLD(スタンディング):35,000円 ※グッズ付き S(スタンディング) :20,000円 2F指定席 :19,000円 ※未就学児(6歳未満)入場不可。6歳以上チケット必要。 ※GOLDのグッズは後日発表予定
Tomoyuki Yamazaki