来日間近のサミー・ヘイガーが語る、エディ・ヴァン・ヘイレンと築いたレガシー
「日本では一部曲目を変えるつもりだ」
ー今回の日本公演のライブ・パフォーマンスをどのように“定義”しますか? スペシャルなイベントだ。コンサートというよりもエディ・ヴァン・ヘイレンと俺が創ってきた音楽の“セレブレーション”だよ。儲けや人気のためにやるのではない。俺とマイケルは、これらの曲のオリジナル・ヴァージョンでプレイしたバンドの2人だ。もし俺たちが生かし続けないと、これらの曲は永遠に葬られてしまうかも知れない。ロックの歴史に残る幾つものバンドが同じことをしている。ザ・ローリング・ストーンズに残っているのはミック(・ジャガー)とキース(・リチャーズ)の2人だし、ザ・フーにいるのはピート(・タウンゼント)とロジャー(・ダルトリー)の2人だ。俺とマイケルも、体力が続く限りヴァン・ヘイレン時代の音楽を生かし続けたいと考えているんだ。どうせやるなら、お客さんに満足して帰ってもらいたい。2時間のショーをやるには、コンディションを整える必要があるんだ。このツアーを始めて、まだ一度もショーを中止にしたことがないよ。一度野外会場で、大雨のせいで中断しなければならなかったけど、それは不可抗力だった。でもその日は「イーグルス・フライ」を始めたところで稲光が走って、まるでステージ効果のようだった。会場にいるみんなにとって忘れられない光景だったよ。日本では屋内会場だから、ショーの最後まで突っ走れる。終演後に「今日は休めばよかった。家に帰りたい」なんて愚痴を垂れたくない。100%のハートとソウルを注ぎ込んだ満足感に包み込まれたいんだ。 ー公式YouTubeチャンネルで「ライブでは珍しいディープ・カッツ(深掘り曲)もプレイする」と宣言していましたが、あなたがいた時代のヴァン・ヘイレンのアルバムは全作品が全米ナンバー1になって、ヒット・シングルも次々と生まれていたので、ディープ・カッツなどというものは存在しませんよね? ははは、君の言うとおりだ。どの曲をプレイしても、みんな一緒に歌ってくれるよ。彼らの人生の一部となって、俺たちは本当に幸せだったと思う。ディープ・カッツといって俺がイメージしていたのは、「セヴンス・シール」のような曲なんだ。シングルになっていないし、MTVで流れるようなタイプではないからね。でも、俺のお気に入りの曲のひとつだよ。このツアーをやることが決まったとき、まず頭に浮かんだのが「セヴンス・シール」だったんだ。 ー「セヴンス・シール」は全米ナンバー1アルバム『バランス』(1995年)の1曲目で、当時のツアーでもオープニング・ナンバーとしてプレイしていたので、ちっともディープ・カットではないと思います! うん、まあ、君の言うことが正しいよ(苦笑)。「セヴンス・シール」はすごくヘヴィで、1曲目にピッタリだった。この歌詞はイングマール・ベルイマン監督の映画『第七の封印』からインスパイアされたんだ。単に映画の内容をなぞるのでなく聖書に記されている、人類の破滅へと至る“七つの封印”、そしてその破滅を回避するために我々が連帯しなければならないと主張している。決してただのパーティー・ソングではないんだよ。この曲を歌うとき、特別なエネルギーに包まれるんだ。とても誇りにしている曲だし、日本で歌うのが楽しみなんだ。 ー北米ツアーではヒット・シングルでもプレイしない曲がありましたが、セット・リストはどのように組み立てているのですか? 俺がステージで歌いたい曲をリストアップして、みんなの意見を聞いてみた。基本的にそれだけだ。いたってシンプルだった。日本では一部曲目を変えるつもりなんだ。「キャント・ストップ・ラヴィン・ユー」は日本ですごく人気があって、1995年の『バランス』ツアーで会場の全員が大声で歌ってくれた。あの感動をもう一度味わいたいんだ。あと大勢のファンからリクエストがあるけど、「ドリームス」は今の俺のキーと異なっていて、やるかどうか判らない。数年前のツアーで、アコースティックでプレイしたとき、音を下げて歌ったけど、ファンから「オリジナルのように歌ってほしい」という声もあった。でも、毎晩オリジナルのキーで歌うのは難しいんだ。俺にとっても思い入れのある曲だし、中途半端なヴァージョンには出来ない。もしかしたら終演後、スタジオ・ヴァージョンをテープで流すかも知れないね。 ージョー・サトリアーニはリーダー・アーティストとして活躍するのに加えて、世界最高峰のギタリスト達の“代役”を務めてきました。ミック・ジャガーのツアーではジェフ・ベック、ディープ・パープルではリッチー・ブラックモア、そして今回はエディと、超一流揃いですが、彼はどんなギタリストだと感じますか? エディとはどのように異なるでしょうか? エディはギターの革命家だった。彼のようなギタリストは、それまで存在しなかったんだ。ロック・ギターは“エディ前”と“エディ後”に分けられるだろう。ジョーはギターの教授に近い存在だ。彼のテクニックはエディと肩を並べるし、それを論理的に解析して、生徒に教えることも出来る。2人ともジェフ・ベックやジミ・ヘンドリックスと並んで評価されるべきギタリストだよ。今回、ジョーはエディと同じように弾くのではない。エディのプレイを解析して、ジョーならではの解釈を加えて、新しい生命を吹き込むんだ。ジェフやリッチーの曲を弾くのと同様に、そのプレイを自分のものにしながら、彼らしく弾くんだ。そしてジョーはライブでシンガーがそうするように、お客さんに語りかける。そんな表現力があるから、彼はどんなギタリストの代わりにもなれるんだ。今、地上にいるギタリストで俺のフェイヴァリットを1人挙げるとしたら、文句なしにジョーだよ。 ーマイケル・アンソニーとは40年近くのあいだ、幾つものバンドで行動を共にしてきましたが、彼の第一印象はどんなもので、今なお一緒にやっている魅力は何でしょうか? マイケルと初めて会ったのは1985年、エディ宅の“5150スタジオ”だった。アレックス、エディと集まって、バンドとしてやっていけるかミーティングを行ったんだ。それぞれが求めるものを話し合ってその後、楽器を持って音を合わせてみることにした。話しているときは「うまく行くかな……?」という不安もなくはなかったけど、4人で一緒にプレイしてみて、彼らとバンドをやりたい!と強く思った。ミーティングが終わった後、兄弟は家に残って、マイケルと一杯やろうって、マルガリータとテキーラを飲んでタコスを食べたんだ。彼と俺はビーチ好きというところも共通していて、今度メキシコのカボ(サン・ルーカス)に行こうぜって意気投合した。 ー海がお好きなのですね? ああ、今もTシャツは着ているけど、Zoomに映っていない下の方は海パンとビーチサンダルだよ(笑)。インタビューが終わったらビーチで少し泳いで、グリルでステーキを焼く。マイケルも似たようなタイプで、以心伝心なんだ。彼のハーモニー・ボーカルも大好きだ。俺の上のパートをずっと歌えるのは彼ぐらいだよ。ベーシストとしても素晴らしいし、親しい友人なんだ。人間としてうまくやって行けないと、ステージで共演しても楽しくないよ。