G大阪が復活へ刻んだ大きな変化 ポヤトス体制2年目 リーグ戦4位&天皇杯準Vと躍進
もがき苦しんだ名門クラブが復活へ確かな歩みを進めた。G大阪は昨年まで3年間はJ1で13位、15位、16位と低迷。今季も開幕前は7位以上に目標設定していた。しかし結果はリーグ戦4位、天皇杯準優勝と躍進。大きな変化を糧に、来季はV奪還を目指す。 就任2年目でチームを立て直したのがスペイン出身のダニエル・ポヤトス監督だ。「私が来る前のG大阪はサッカースタイルが築き上げられておらず、ぶれていると感じた」と振り返る。「プレースタイルの確立、その中でしっかり軸を持たせようとやってきた」と、選手を信頼して起用することで攻撃、守備の意思統一を充実させた。 スペインでは13歳ごろからジュニアチームのコーチを務めてきたという、根っからの指導者気質。G大阪でも選手とのコミュニケーションに多くの時間を割く。話し合うことでポジティブな考えを植え付け、能力を引き出した。就任当初はスペインと日本のサッカー観の違いに戸惑いもあったというが、選手の成長や変化は日々、目を見張るものだったという。 2年間で日本選手のポテンシャルの大きさを実感したことは新たな発見だったという。「日本人選手のキャパシティー、潜在能力はすごい。今後もそれを最大限に引き出せると思う」と選手たちの成長ぶりに舌を巻く。そして、「いつか日本代表を率いたい」という夢も持っている。 クラブも大きな改革を行った。「フットボール本部」を設置し、本部長には松田浩氏が就任。育成や海外戦略も見据え、一貫した強化を図った。補強では名古屋からDF中谷進之介を獲得。昨年リーグワーストタイの61失点だった守備面に強力なセンターバックを加えた。MF鈴木徳真、FWウェルトンらも獲得し、期限付き移籍先からGK一森純やFW坂本一彩が復帰。今季の失点数はリーグ2番目に少ない35だった。昨季で現役を引退した元日本代表MF遠藤保仁コーチの入閣も好影響を及ぼした。 ケガから復活した主将のFW宇佐美貴史も今季の快進撃に欠かせない。22年3月に負った右アキレス腱(けん)断裂の影響で、昨年はリーグ戦29試合で5得点にとどまった。今季も開幕前は「この手のケガは細胞や神経伝達の回復に2、3年かかると言われている。試行錯誤を繰り返しながら」と手探り状態だった。 しかし結果はチームトップの12得点、リーグ4位の8アシスト。精度の高いキックは他チームの脅威となった。5月には「フィジカルは年を取ると落ちていくだろうが、技術はこの年齢(32歳)になっても落ちないというか、成長させていける」と進化を認めている。 天皇杯決勝は右太もも裏の肉離れで出場できなかった。しかし、チームメートを鼓舞し続けた主将の涙と、それに応えようと一丸となり、リーグ戦を4連勝で締めたチームの絆は来季につながる力を確信させた。(デイリースポーツ・中野裕美子) ◇ダニエル・ポヤトス(Daniel Poyatos)1978年6月23日生まれ、46歳。スペイン出身。RCDエスパニョールU-15、RCDエスパニョールU-17監督、U-19バーレーン代表監督、RマドリードU-18監督などを経て21、22年はJ2徳島監督。23年からG大阪を率いる。家族は妻と1女。