「富士山」で噴火がおこったら…噴火直後から飛んでくる「噴石」、身を守る「意外な最善策」
過去の被害例を生かす
噴石は飛ぶ速度が速いため、直接当たればケガをし、さらに死亡する可能性も十分にある。そして噴石は多くの場合に屋根や壁を貫通し、建造物を破壊する。また、火山弾など高温の物質が降ってくる場合には、火傷をしたり火災を引き起こすこともある。 2014年9月に起きた御嶽山の噴火では、火口周辺にいた60名近い登山客が犠牲となったが、多くの命を奪ったのは突然降り出した噴石だった。噴火の規模が小さい割に多大の人的被害がもたらされたことに、火山関係者は大きなショックを受けた。 火口から雨のように降り注いだ噴石の速度は、火口から1キロメートル離れた場所でも秒速100メートルを超えるというすさまじさだった。そのため噴石に直接当たらなくとも、地面にぶつかって砕けた破片が当たるだけでも致命傷となった。 噴石が降り出すと、道路にも大きな穴を開けるなどの障害が出る。噴石が降っている地域への救助を行うためには、岩石が当たっても操縦可能な装甲車などの特殊車両が必要である。噴石が降り始めたら避難路を確保するのが困難になることも考えておく必要がある。また、噴石が飛来しているあいだは、空からの救助は不可能である。 噴石が降ってくる時間は、一般的には短いと考えてよい。噴火と同時に噴石の放出が始まり、数十分以下の短時間で終わることも多い。だが一方で、噴石の放出はしばしば断続的に起こるため、しばらく小康状態を保ったあとに、突然再開することがある。火山活動が下り坂になったと判断して行動すると、噴石の被害に遭うことも起こりうる。 噴石の飛来範囲は火山噴出物の中では比較的狭いが、ハザードマップで示された範囲内にある地域では、噴石の放出が始まったら迅速に避難する必要がある。具体的には旧・上九一色村や鳴沢村がこれにあてはまる。 突然降ってきた噴石を避けるためには、シェルターが役に立つこともある。阿蘇山の中岳火口周辺、浅間山の鬼おに押し出し溶岩分布域、伊豆大島の三原山などには、観光客が逃げ込むためのシェルターが設置されている。火口と反対側に出入り口を開けて、火口から直接飛んできた噴石から緊急避難するのである。