新Magic Keyboard登場でも尽きないiPad Proのジレンマ - 松村太郎のApple深読み・先読み
■MacBook Airと競合するか? ここで気になるのは、普段持ち運ぶデバイスとして「MacBook Airを選ぶか」「iPad Pro + Magic Keyboardを選ぶか」という問題です。 iPad Proの軽量化によって、重量の面ではiPad Proに軍配が上がります。セルラーモデルを選択すれば、5G通信を単体で行うことができ、Wi-Fi探索やスマホのテザリングを気にすることなくネットにつながる点も、iPad Proならではのメリットです。 そこで考えるべきは、自身が利用するアプリや作業の内容です。 MacBook Airから離れられない人は、Microsoft OfficeやAdobeなどのビジネス系、クリエイティブ系のアプリケーションを多用している人かもしれません。iPad向けにもこれらのアプリは提供されていますが、必ずしも同じ機能や完全な互換性を期待することができず、iPad版に合わせたワークフローにならざるを得ません。 一方で、PagesやKeynoteといったAppleのアプリ、Googleドキュメントのようなクラウドベースのアプリを使っている場合、大きなストレスなくiPadでの作業を進めることができます。 あるいは筆者が愛用している、Mac、iPad、iPhone向けにアプリが提供されているMarkdownエディタアプリの「Ulysses」 のように、各プラットフォーム向けにアプリが提供され、iCloudなどでデータが同期されるアプリを用いれば、iPadでの編集結果をMacで加工するといった連携も可能となります。 また、Apple Pencilが利用できる大きなメリットが、iPadにはあります。例えば、メモやフリーフォーム、Goodnotesなどのアプリを使って手書きでメモを取ったりノートを書いたり、イラストや図などを描いて共有するといったことは、Mac単体では思うようにはいきません。Magic Keyboardから取り外してiPad単体を持てば、電子書籍にペンでマーカーを引きながら読んだり、ゲームや動画視聴などのシーンにiPadの手軽さを活かすことができます。 用いるアプリの作業によってiPadでも問題ない環境であれば、モバイル接続、ペン操作、タブレットとしての活用というiPadにしかできないメリットが際立ってくることになるでしょう。 ■残るは価格の問題 もし、iPadで仕事をこなせる環境が整ったとしても、次に来るのは価格の問題です。 軽量化されたiPad ProはiPadシリーズの上位モデルにあたり、11インチモデルで168,800円から、13インチモデルで218,800円から(いずれも256GBストレージ、Wi-Fiモデル)。さらにMagic Keyboardはそれぞれ49,800円、59,800円となっており、13インチモデルの組み合わせは278,600円からとなります。 これに21,800円のApple Pencil Proを追加すると300,400円と、30万円台の大台を突破。さらに、iPadならではのモバイル通信が可能なモデルにする場合、この価格はさらに上昇し、336,400円からとなります。 かたや、MacBook Air 13インチはM2モデルで148,800円から、M3モデルでも164,800円からの価格で購入できます。iPad Proは、最新鋭のM4チップと有機ELディスプレイを備えているとしても、MacBook Airの倍近い価格は大きな負担となります。 もし、13インチiPad Airで環境を組み立てた場合でも、本体は128,800円(128GB)から、Magic Keyboard(旧型)は 59,800円、Apple Pencil Proは21,800円で合計210,400円となり、価格の面でMacBook Airより有利になることはありません。
松村太郎