なぜ年を取ると「しょうゆをドバドバ」かけるのか
塩分も、体液に溶け込んでいます。ですから、食べ物や飲み物で摂取した塩分は、体内に吸収され、体液に入ってきます。その量が多くなると、当然、体液の塩分濃度が上がってしまいます。 すると、体は「これは大変!」と反応して、のどの渇きを感じさせて水を飲ませたり、体内に水分をため込むなどして、塩分濃度を元に戻そうとするのです。言いかえれば、塩分をとればとるほど、体液の量が増えるのです。 「塩辛いものを食べ過ぎたから、むくんじゃった」という経験は、よくありますよね。摂取した塩分のぶんだけ体液が増えて、皮膚の下にたまっている状態が、むくみです。
■塩味を感じる機能が「若い頃の12分の1」に 体液が増えるということは、体液のひとつである血液も増えるということでもあります。そのため、全身から心臓に戻ってくる血液も、心臓が全身に送り出す血液も多くなります。 これは血液を全身に送り出すポンプのような役割を担う心臓にとっては大変な重労働で、たくさんの血液を押し出すために強い圧をかけて血液を全身に送り出さなくてはなりません。 その結果、血圧を上げる必要が出てきます。このような流れで、塩分をとり過ぎると、血圧が上がるのです。
本来、私たちの味覚は、体に必要なぶんだけの塩分で満足するようなしくみになっています。しかし、年齢を重ねると味覚、中でも塩味を感じる機能が落ちてきます。ある研究では、塩味を感じる機能が若い頃の12分の1まで衰えてしまうという結果も出ていました。 つまり、本人が気づかないうちに塩分の摂取量が増えてしまうということです。 日頃から、しょうゆをドバドバかけてしまいがちな方は要注意。その結果、高血圧を招きやすくなります。高血圧になると腎臓に負担がかかるようになります。年齢を重ねるにつれ、徐々に味覚は衰えるということを自覚して、塩分控えめな食事を心がけることが大切です。
髙取 優二 :医学博士、腎臓専門医