森永康平氏が解説する「投資に向いている人・不向きな人」
「知らなかった」で資産を減らさないために
「では、始めるべきか?」と問われると、私の答えは「始めたい方は始めると良いですよ」です。投資をしたいならすると良いし、したくないならしなくて良い。そこは個々人の選択です。「投資すべき」と言い切る方もいますね。「今後インフレで現金の価値が下がるから、運用で増やそう」という勧めもよく耳にされるでしょう。 確かに、今後物価が毎年2%上がれば、現預金の価値は確実に2%減ります。では投資なら確実に増えるかというと、そんなことはありません。大きく増える可能性もあれば、2%より大きく減る可能性もあるのが投資の世界です。 ですから、ここもやはり個々人の選択。「確実に2%下がる」ほうを選ぶか、「上がるかもしれないし下がるかもしれない」ほうを選ぶかは、皆さん次第です。 そういうわけで、正確に言えば私は「推奨派」ではありません。ただ、投資という選択肢を「知らなかったから」資産を2%減らすのは不幸だ、とは思っています。私が投資について情報発信するのは、知らないがゆえに損する方を減らしたいからです。なるべく多くの選択肢を提供し、あとはご自身で決めていただければ、というスタンスです。 そのうえで、先ほど話した「インフレ対策」についてもう一つ、視点を提供しておきましょう。2%の物価上昇の結果、現預金が2%価値を落とすのは、当然の事象です。お金自体に、増えようとする意志はないからです。 対して株価には、経営者の意志が働きます。企業経営者は、インフレになれば、その環境の中で対抗策を取って利益を出そうとします。物価上昇という現象に対して、値上げなりコスト削減なり、何らかの対応をして利益を出そうとし、結果として利益が出れば株価も上がります。 つまり株価は、外部環境に応じた能動的な要素を伴うのです。「インフレ対策としての投資」にはこうした側面もあることを、知っておいていただければと思います。
一番得をするのは「放置」できる人
さて、選択は個々人の自由だと言いましたが、投資に「向く・向かない」はあります。 不向きなのは、株価の上下に一喜一憂するタイプの方。こうした方は、下がったときに慌てて売って損を出しがちです。短期で売買して利益を出そうとする方の場合、いよいよ危険です。 四六時中チャートに気を取られ、仕事や家庭生活に支障をきたし、人生を棒に振る人も実際にいます。この方法で何十億、何百億もの利益を出すのは、ごく一握りの「スター」であり、その足下には「向いてなかった人」の、無数の屍が転がっているのです(笑)。 逆に、向いているのは、1回積立投資の設定をしたら「そのまま忘れる」くらいの気持ちで臨む方です。真偽は定かでないものの、証券会社でよくささやかれる逸話があります。ある証券会社が、投資のリターンが良い人の属性を調べたところ、最も良かった層は「すでに死亡している人」だったとか。 要は、「放置こそ最強」ということです。良い金融商品を選び、ひたすら長く積立投資を続ける。これが王道と心得ましょう。