電気自動車の「バッテリー問題」にどう取り組むか
エコカーとして日本の役所がお墨付きを与え、減税を始めさまざまな特典を受けられる電気自動車やハイブリッドだが、その生産から廃棄まで全部を通したスパンでみると、本当にエコなのかという議論が絶えない。 【写真】「CO2抑制=低燃費」自動車がエコカーであふれる理由 エコの定義をどこに置くかは難しいところだが、一応のところ温暖化ガスの排出量を主な基準としたい。以前の原稿にも書いたが、世界中の自動車メーカーがエコカーを作らなくてはならない現状は、主に「気候変動枠組条約第3回締約国会議」で定められた京都議定書から始まっているからだ。
ゼロエミッションの前提
特に電気自動車(EV)は、走行時にはゼロエミッションだが、その電気はどこでどうやってつくられているかが問題になる。 太陽光や風力、水力でつくられた電気なら言葉通りゼロエミッションだが、これらの再生可能電力が安定電源になりにくいのは周知の通り。そして原発停止中の日本では電力は主に火力発電でつくられている。火力発電でつくった電気を充電してゼロエミッションと言われても欺瞞の構図に見えてしまう。 原子力発電を再開すれば、部分的とは言え解決する話だが、それも簡単ではない。休止中の原発を再稼働する話は別として、福島の一件を完全になかったことにして、今後原発を新設したり、設備更新したりすることは、その是非は別として政治的に困難過ぎ、実現性に難がある。原発をめぐっては、使用済み燃料の最終処分の問題に目途が立たないこと、そしてそれ以前に福島の事故を収束させるノウハウが確立していない点などの課題があるからだ。 ただし、正常に稼働している範囲において、原発はあきらかに温室効果ガス抑制にメリットのある発電方法だ。そして、現在市販されているEVが開発途上にあった頃は3.11以前なので、EVはその全体構想において、原則的に原発による夜間電力の剰余が前提になっている。これがEVの立ち位置を不鮮明にしている最大の問題だ。
EVはスマートグリッドと一体
EVはいわゆる「スマートグリッド構想」のピースの一つだ。経産省はスマートグリッドを「家庭やビル、交通システムをITネットワークでつなげ、地域でエネルギーを有効活用する次世代の社会システム」だと定義し、そのメリットを「自然を利用した発電は天候によって発電量が変化します。一方、電力の消費量も、刻々と変わります。スマートコミュニティでは変化する電力の需要と供給をITによってコントロールし、無駄なく安定した電力の活用を可能にしていきます」と説明している。 つまり電力網のITネットワーク化によって自律分散制御化しようという考え方だ。このシステムの中で、各家庭の電力貯蔵庫として注目を集めたのが大容量バッテリーを搭載するEVだ。