電気自動車の「バッテリー問題」にどう取り組むか
日本の一般家庭の1か月あたり電力消費量は約300kWh(電気事業連合会調べ)なので、一日あたり大体10kWh。ニッサン・リーフのバッテリー容量は24kWhなので、計算上2日半分。テスラの85kWhモデルなら8日半の容量となる。もちろんバッテリーのエネルギー変換効率は100%ではないから全部は使えない。使い方にもよるが一般的には80%程度だと言われている。EVを家庭の電力線につないで充電し、必要とする時にこのバッテリーから電力を取り出せれば、経産省の言う様に「無駄なく安定した電力」の利用が可能になる。 例えば、太陽光発電が普及しても、各家庭に電力貯蔵庫があれば太陽が隠れた途端にその地域で一斉に電力需要が増えると言ったことが起こりにくくなる。数日内に天候が回復すれば、その間はEVのバッテリー給電で過程の電力を賄える。あるいは原発が稼働していれば、夜間の余剰電力を貯めて、日中の電力消費ピーク時に使うことでシステム全体の負荷を減らすことができる。送電網全体の融通性が上がるのは間違いない。 3.11でその取り組みが足踏みしてしまったことは残念ではあるが、長期で見た時、原発が再稼働するにしても、再生可能エネルギーの比率が高まるにせよ、EVバッテリーを使ったスマートグリッドが有用であることは間違いない。
生産や廃棄の負荷について考える
しかし、スマートグリッドとの親和性のみをクローズアップして、EVが環境の優等生であるとは言いきれない面がある。例えば、一般に知られているのは生産時の温暖化ガス排出量が多いことだ。 技術は日々進歩しているし、クルマによっても違うので正確な数字を挙げるのは難しいが、過去によく目にした数字で言うと生産時の温暖化ガス排出量は実にガソリン車の2倍にもなるという。 EV全体の中でも特に大容量バッテリーは生産時の温室効果ガスの排出量が多い。それだけでなくバッテリー周辺の機器に温暖化ガス負荷の高いアルミを多用するため、ここでも温室効果ガスが増えてしまう。 それらの負荷がどの程度かと言えば、クルマのライフサイクルで見ると、走行中のエコをこの生産時負荷がほぼ打ち消してしまうとする研究もある。また使用済みバッテリーは処分するのが大変だ。多くの重金属を含んでいるだけでなく、解体時の取り扱いによっては爆発や炎上の危険もある。