42万人が利用。「差異を彩へ変える」ダイバーシティ求人サイトJobRainbow代表 星賢人さんインタビュー
LGBTQ+をふるい落とさない企業とのマッチング
──では、改めて事業内容について教えてください。 まずはダイバーシティ採用事業である求人サイト「JobRainbow」の運営です。すでに42万人の方にご利用いただいており、掲載企業は400社を超えました。多くの人材が、自分らしく力を発揮できる企業に出会うプラットフォームです。 もう1つがDEIBラボ事業であるLGBT研修やD&I導入のコンサルティングなど、組織でD&Iを実現するためのソリューションを提供しています。こちらは行政からもお声がけをいただく案件が増えてきました。 我々の強みは当事者視点があること。研修では当事者のリアルな声をお伝えしたり、コンサルティングでは就業規則や制度改革、マニュアル作成など当事者ならではの視点でコンサルティングさせていただいています。 そして、先日リリースしたばかりなのがAIキャリアアドバイザー「Snapy(スナッピー)」。これはチャット形式でAIアドバイザーとキャリア相談ができ、自己分析から仕事探し、面接練習、退職準備までサポートするサービスです。 ──AIに着目されたきっかけは? 大学院でAIの社会実装についてディスカッションする機会が多かったのですが、D&Iの観点がまだAIには組み込まれていないという課題感がありました。 多様な人々のデータが入っていないと、AIが提示する回答にはどうしてもバイアスがかかってしまいますし、求人という観点でいうと同質性の高い人がAI採用されやすい弱点があります。 AIによって社会が変わろうとしているこのタイミングで、私たちもD&Iの観点を含んだAIを社会実装しなければ、と考えたのです。
「差異」を「彩」として誇れる社会へ
──事業は順調と伺っていますが、困難も多かったのでは? はい、難局は幾度となくありました。 弊社は2016年創業で、おかげさまでずっと成長し続けてきましたが、一方で困難にも直面してきました。 「D&Iをビジネスにする」ということに対する反発もあったり、弊社のことをよく思わない人が、掲載企業さまの受付で暴れるという事態が起こってしまい、結果、契約も打ち切りになってしまったり。 でも、そんなことがあって私が落ち込んでいるときも、社員を見てみると、みんないつもどおり普通に仕事しているんです。みんなの強さに救われました。 そして、困難をよそ目に、事業はどんどん成長しました。地球に重力があるように、本来D&Iは世の中にとって当たり前なものと捉えられるようになったら、色々なことが気にならなくなりましたし、自信にもなりました。 ──仲間に助けられたということですが、チームビルディングで大切にしていることは? 相手へのリスペクトです。 実は創業当時の私は「とにかく私の方針に従って動いてください」というような強引なリーダーだった。自分でも傲慢だったと思います。 その結果、最終的に信頼していたメンバーが辞めてしまい、大きなショックを受けました。そこでようやく「自分がメンバーのポテンシャルに蓋をしてしまっていたんだ」と気づいて。以来、自分のやり方が一番うまくいくはず、という思い込みやプライドを手放したのです。 メンバーの意見を聞くようになると、自分一人で考えていたことより良いアイデアがたくさんあるのに気づきました。そこからはメンバー全員とお互いに意見が言い合える、健全な関係を築けるようになりましたね。 ──JobRainbowが目指しているゴールはどのようなものでしょうか。 私たちのビジョンは「差異を彩へ。自分らしくを誇らしく。」というものです。 創業当初はLGBTQ+の人たちが働きやすくなれば、という思いだけだったのですが、今は「他人と違うことは誇りである」というメッセージをあまねく人々に届けたいと思っています。 LGBTQ+の人の中にもいろんな人がいて、マイノリティが弱みだと思う人もいれば強みだと捉えている人もいる。この差異があるのは事実ですが、どういう視点から見るかによって見え方がまったく違うわけです。 「現実を変えることはできなくても、見方を変えることはできる」という、内なる自由は全員に担保されている。そんな想いがこのビジョンに込められています。 すべての人が唯一無二の存在になれることを願っています。