京大がコロナ治療薬、改変ES細胞からキラーT細胞作製
京都大学の河本宏教授らは藤田医科大学、大阪大学、国立成育医療研究センター研究所との共同研究で、ウイルス感染細胞を殺傷する能力があるキラーT細胞を用いた新型コロナウイルス感染症治療用の細胞製剤を作製した。拒絶されにくいように遺伝子を改変したES細胞(胚性幹細胞)からキラーT細胞を作製する。このほど特許出願を完了。今後、この細胞製剤を用いた臨床試験を藤田医科大で行う計画。 拒絶されにくいようHLA(白血球の血液型)の遺伝子を欠失させたES細胞を材料として使う。この細胞からキラーT細胞を作製し、新型コロナ由来のたんぱく質を感知できるT細胞レセプター(TCR)遺伝子を導入した。作製したキラーT細胞は、標的細胞を効率よく殺傷した。感染細胞を用いたテストではないが、新型コロナ由来のたんぱく質を発現した細胞を殺傷したため、機能としては十分評価できたとしている。 最初の臨床試験まで、3年くらいは要するとみている。最初の臨床試験は、免疫不全状態になった患者で起こる難治性の新型コロナウイルス感染症を対象に藤田医科大で行う計画。 今回の細胞製剤は、例えば日本人の場合、頻度の高い順にHLAを並べてベスト10のHLAに対応するTCRを使って作った細胞製剤を10種類用意すれば、90%以上の人をカバーできる。 今回開発した技術は他のさまざまなウイルスにも使える。造血幹細胞移植後に起こる致死的なウイルス感染症のほか、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザなどにも細胞製剤を作製して備蓄できる。