劇場アニメ「ルックバック」主演の河合優実と吉田美月喜が語る「物語が持つ力」――「人生を救うこともできる」
河合:いやいや(笑)。でも確かに動きながらやってみてくださいといった指示は受けたりしていましたけど、そういう走ったり息遣いだったりという台詞がない場面は、思うままにやってくださいと言われることが多かった気がします。生っぽさやライブ感をまず録ってみたいということで。
物語の持つ力
――「ルックバック」は物語や創作の力を描く作品でもありますが、演じることで物語を紡ぐお2人にとって、物語の持つ力とはどういうものだと思いますか?
吉田:すごく大きな影響を与えるものですね。例えば私は小さい頃、「アンパンマン」のロールパンナが好きだったんですけど、あの少し闇がある感じに憧れたりして(笑)。そういう風に私自身、物語やその登場人物に憧れたり、大きな影響を与えられてきたと思うんです。この「ルックバック」を観たことで漫画を描きたいと思う人もいるでしょうし、物語は人生を豊かにしてくれるものですよね。一方で影響が大きいからこその怖さもありますけど。だからこそ自分が作品に携わる時は、誰かの人生に良い影響をもたらすことを目標に作りたいなといつも考えています。
河合:本当に良くも悪くも、とても大きな力を持っていますよね。子供たちが「アンパンマン」を観て、登場人物や善悪の描写に影響を受けて、自分の中の価値観や倫理観として溶けていくように、物語は観ている人の世界と繋がっているということを私も自覚していたいなと考えています。物語は人生を丸ごと変えられるし、救うこともできるし……その力が与える影響を受ける側としても知っているからこそ、作る側に立った時もそのことを忘れないでいたいなと。
――本作への参加で自分の声や、声の芝居に対する考え方に変化はありましたか?
河合:お芝居の中で声がどれだけ大きい要素を持っているかを理解しているつもりでも、実際に声優をやってみると声の芝居をする上での感覚の違いをとても感じましたね。元々舞台や映像、朗読や声優における声の使い方の違いを考えることは好きだったんですけど、映像を続けていくうちにその意識が離れつつあったので、今回声の根本的な部分について考え直すきっかけにもなりました。間違いなく良い影響を及ぼす体験だったと思います。