劇場アニメ「ルックバック」主演の河合優実と吉田美月喜が語る「物語が持つ力」――「人生を救うこともできる」
吉田:私はアフレコ前に方言指導で一度だけスタッフの皆さんにお会いしたんです。その時に、私の「そのままの声が京本に通じると感じたので、台詞は練習しすぎず方言の練習だけしてほしい」と言われて。どういうことだろう…と思いつつ、ひたすら方言のテープを聴いてそれを感情ゼロで話してっていうのを繰り返していました。声優だと声でしか表現ができないということもあり、方言もごまかしがきかないので、そこは本当に頑張りました。でも変に身構えて家で演技の練習をしすぎなくて良かったと思います。録る前は不安だったんですが、実際アフレコする時には、音響監督が方向性を調整しながら導いてくれていたので、そこを信じていけば大丈夫だろうという安心感がありました。
河合:確かにそうだね。私もディレクションに従ったりオーダーに応えようという気持ちが、いつものお芝居より強かったなと思いました。それは声優の仕事がわからないからこそですね。
――監督ではなく音響監督がお2人のディレクションをされていたんですね。
河合:そうですね。監督も一緒でしたが、声優の演出をしてくれるのは音響監督でした。私も「監督とはあんまり直接話さないんだ……」って初めて知って。もちろん監督によるのかもしれないんですが。
吉田:今回の現場だと、監督が感覚で考えていることを音響監督が汲み取って、私たちに分かりやすく言語化して伝えてくれていたのかなと思います。
河合:音響監督は木村絵理子さんという方なんですが、放言指導の声優さんも「木村さんはすごい」って言うくらいの方で。対面ではなくブースでしか話せない中で、すごく分かりやすい言葉でどうすればいいのかを明瞭に伝えてくださって、とても頼りになりました。
――藤野の走るシーンの躍動感が素晴らしかったですが、あのシーンも何か指示があったんですか?
吉田:たしか走るシーンはあんまり指示を受けてなかったよね? そこは流石のプロでした。