【障がい児を育てながら働く⑱】「好きな男の子」ができ、学校が楽しくて...。できることがどんどん増えていく旭出学園での成長
「『リュックをもう少し大きなものにしてみましょう。自分で出し入れできると思います』先生方の助言や、ちょっとした工夫で、娘はできなかったことがみるみるできるようになっていきました」 【動画】「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」連続セミナー動画はこちら ************ 「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」という団体をご存じでしょうか? この会では、障がい児や医療的ケア児を育てながら、働き続けたい親たちが、ゆるやかにつながり、支え合っています。 障がい児や、医療的ケア児を育てながら働こうとする親の前には、両立を続けるためのハードルが幾重にも立ちはだかっています。子どもや家族の暮らしを守るため、この団体は行政や勤め先への働きかけを続けています。ケアの必要な子を育てている親も働き続けることができるよう、育児・介護支援制度を子の年齢で区切らず、障がいや疾患の状態に応じて配慮してもらえるよう、社会を変えようとしているのです。 この会の会長であり、朝日新聞社に勤めながら、重度の知的障がいを伴う重い自閉症の16歳の娘さんを育てていらっしゃる工藤さほさんへのインタビュー、第18回です。 ***** ―― 2020年4月に、私立旭出学園中等部に進学するも、コロナ禍で休校。大変苦労をなさったと、前回お伺いしました。学校に通えるようになったのはいつごろからでしたか? 新型コロナウィルスのワクチンが行き渡り、徐々に世の中が平時に戻りつつあった2021年ごろから、少しずつ通常の学校生活が戻ってきました。 とはいえ、特別支援学校にはワクチンの接種も難しい基礎疾患のあるお子さんも通っています。子どもたちは極力マスクを装着し、風邪気味の家族は登校を控えました。下校時間を1時間早め、生徒児童がいなくなった教室や廊下を、先生たちが床も含めて毎日アルコール消毒をしていました。 ―― 中学校に通い始めた娘さんはどんなご様子でしたか? 憧れをもって入学した旭出学園でしたが、新型コロナウィルスによって腰を折られてしまう形となり、果たして娘がなじめるのか心配でした。しかし、それは杞憂でした。 通い始めると、学校が娘は楽しくて仕方がなくなり、お休みの日は「あさひでいく~」と繰り返し言うようになりました。高校2年生になった今も、夏休みなど長期休暇の前は、とても残念そうにしています。 ――感覚過敏でつけられなかったマスクも、先生方が上手に導いてくださって装着できるようになったとのことでしたね。 そうなんです。水が好きな娘は水族館巡りも大好きで、コロナ前には毎週末、品川の水族館に通っていました。なかでも「オキゴンドウ」が一番のお気に入りだったんです。 そのことをご存じだった担任の先生は、オキゴンドウのイラストを描いたマスクを作ってくださいました。おかげで、マスクをつけることができなかった娘が、次第に装着できるようになったのです。