教師の家庭訪問 廃止か存続か 割れる対応 廃止は事前準備の負担減で担任と保護者歓迎 存続は「子どもの変化を把握する材料」
島根県内の小学校で家庭訪問を取りやめる動きが出ている。教員は事前準備の負担軽減につながり、保護者も家の掃除や茶菓子の準備に頭を悩ます必要がなくなるため、双方で歓迎の声が上がる。不登校の増加など子どもを取り巻く環境が複雑化する中、児童の家庭環境や雰囲気を感じ取ることができる家庭訪問のメリットもあり、継続する学校もある。 【写真】体育座り見直し 7割前向き 島根の小中学校8割採用
松江市立来待小学校(同市宍道町上来待)は、教員の業務削減などを目的に2024年度、家庭訪問を個人面談に切り替えた。 家庭訪問は毎年4~5月に実施し、玄関先やリビングで担任と保護者が一対一で子どもの家庭や学校での様子を意見交換していた。今年から、希望制だった校内での個人面談を全員参加にし、教室で机を突き合わせて懇談する。 杉原孝尚校長は「教員も保護者も忙しい春先の業務を削る。個人面談で家庭訪問の趣旨である児童の様子も確認できる」とする。 文部科学省によると、家庭訪問は子どもの家庭や地域での生活実態を把握する一つの手段とする。県内でも通学路の安全確認、有事に備えた児童宅の把握などのため実施されている。 ただ、家庭訪問をする場合、担任は保護者の希望や住所に合わせて順番や時間を調整し、当日時間に遅れないように休日や放課後に現地に足を運び、事前に道順を確認するという。授業準備や成績処理など、業務量が多いとされる教員の負担の一つだ。
安来市立広瀬小学校(広瀬町広瀬)は、新型コロナウイルス禍などを契機に22年度から家庭訪問を取りやめた。児童宅の把握は継続するが、訪問がないため教員から時間的余裕につながるとの声もある。個人面談などで保護者とのつながりは維持しており、小西修二教頭は「業務削減とのバランスが取れる」と話す。 自宅の掃除に加え、コーヒーかお茶か、茶菓子は何にするのか保護者も事前準備に悩み、担任も各家庭の厚意をむげにできず、気の使い合いが発生する。家庭訪問のない松江市立古江小学校(松江市古曽志町)の児童の母(43)は「家庭訪問は気軽に話せる利点もあるが、ないことで準備の手間が省ける」と評価した。 一方、23年の県内小中学生の不登校は8年連続で増加し、子どもの変化を把握する重要性は増す。希望制で家庭訪問を継続する益田市立真砂小学校(益田市波田町)の品川智成校長は「子どもの元気がない時や有事の際に、背景を想像し、理解するための材料の一つになる」とした。