年金15万円・75歳母「あなたには、親を看る責任があるのよ!?」高齢者施設を脱走後、娘に説教も「もうムリ、ごめんね」…施設入所を巡る激しい攻防
40代の会社員女性…兄と弟に母親の介護を押し付けられ、疲弊
介護負担の重さについては、しばしばマスコミでも報道されているとおりだ。実際に、身近な人が介護と向き合い、実情を見聞きしている人、当事者の声を聞いている人も多いに違いない。 厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、主な介護者が「ほとんど終日介護にあたったいる」という割合は、「要介護1」では11.8%だが、「要介護2」は17.0%、「要介護3」は31.9%、「要介護4」は41.2%、「要介護5」は63.1%…と、介護度が重くなるほど、負担も重くなっていく。 横浜市在住の40代のある女性は、実家で独居生活を送っている母親の介護に疲れ切っていた。父親は3年前に亡くなったという。 「私は3人きょうだいの真ん中で、私と2つ違いの兄と弟がいますが…」 きょうだいはいずれも実家の近隣エリア在住で、電車で10~30分程度。しかし、兄と弟は仕事を理由に母親のサポートに手を出さず、それぞれの妻も「介護は実子」と主張し、一切手助けをしてくれない。 「私だって会社員です。夫は激務で頼れないし、小学生の末っ子の世話もあります。会社帰りに立ち寄って、土日に足を運んで、もうヘトヘトです…」 可能な限り介護サービスを活用しようとしたが、「なぜ実の娘がいるのに、他人の手を借りる必要があるのか」と母親の逆鱗に触れた。 「挙句の果てには〈介護しない娘には、遺産は一切やらない〉とまで言われてしまい…。なんていう言い草なのかと。自分の母親ですが、あまりのワガママに呆れました」
「あなたには娘として、親を看る責任があるのよ!?」
ところが女性は過労がたたったのか、運悪くコロナに罹患。2週間ほど母親のもとに通えない日が続いた。 さすがに女性に同情した兄と弟とともに、ケアマネージャと相談し、母親を老人ホーム入居させようと動き始めた。 女性の母親は75歳。施設の入居期間は5年以下といわれているが、長期の入居も想定し、月額費用は母親の年金額の月15万円で収まるところをターゲットとし、入居金はゼロか、できるだけ少ないところを狙った。そして、面会に行きやすい距離感であることも外せない。 きょうだい3人で血まなこになって探した結果、奇跡的に条件にマッチた施設が見つかり、母親に入所してもらうことができた。 ところが、ホーム入所から1カ月ほど経過したところ、施設から女性のもとに緊急連絡があった。なんと「母が施設からいなくなった」というのである。 施設の従業員の探索により、すぐに母親は見つかったが、「家に帰して!」と叫び、落ち着くまで大変だったという。しかしその翌日、母親はまたしても施設から逃走。そしてなんと、女性の自宅へやってきたのである。 「親をあんな所に押し込めて、娘として恥ずかしくないの!?」 「あなたには娘として、親を看る責任があるのよ!?」 と激怒。 「娘だからって、そんなことをいわれても…。子どもの責任は平等じゃないでしょうか…」 施設からやんわりと「迷惑です」といわれてしまい、兄と弟からは「俺たちにはどうしようもない」頭を下げられたうえ、下駄を預けられた格好になってしまった女性。なんとか施設に戻ってもらったが、とてもこのまま落ち着いてくれるとは思えないという。 「みんながみんな、ウチの引き取りを希望しているのはヒシヒシとわかるのですが、とてもじゃないですが、応じることはできなくて。〈もうムリ、ごめんね〉って…」 兄と弟、そして母親との攻防はまだ続きそうだという。女性が意思を通すことはできるのだろうか。 介護問題の裏側には、介護する側・される側の「べき論」があり、それが事態を一層複雑にしているのかもしれない。 [参照] 厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」 総務省「人口推計月報」
THE GOLD ONLINE編集部