【トイレリフォーム】「節水タイプに変えたら流れない」「便座の向きを考えず改修」など失敗例も続々 大掛かりなリフォームを避けるなら“ポータブル水洗トイレ”の選択肢も
「老朽化が進みバリアフリー対応もしていない我が家で、最後まで快適に過ごしたい」という希望を叶えるのにリフォームは有効だろう。しかし、多額の費用をかけたにもかかわらず、逆に住みづらくなるという落とし穴が潜んでいることも少なくない。今回はリフォームのプロがトイレをリフォームする際の注意点を指南する。 【写真】トイレリフォームの注意点について解説した白子靖将氏、阿部一雄氏
節水タイプに替えたら汚物が流れなくなった
「2023年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」によれば、リフォームを実施した人の48.4%がトイレを替えていた。 現在はタンクがないタイプの節水トイレが登場し、省スペース&省エネ化で人気を博している。 だが、都内在住のCさん(62)は昨年夏に節水トイレに交換したところ、思わぬ事態に見舞われたと明かす。 「築40年のトイレを工事費合わせて約20万円で交換しました。タンクがないので見た目も良くコンパクトになった分、広くトイレを使えると喜んでいたのですが、トイレの流れが悪くなり、詰まることが増えてしまいました」 Cさんは1回のトイレで2度、3度と流すことになり、「むしろ不便になった」と肩を落とす。 リフォームとリノベーションを専門とするケアフル株式会社代表の白子靖将氏は「築年数が古い家と節水トイレの相性は良くない」と指摘する。 「下水管は適切な勾配があることでトイレの汚物が流れる仕組みですが、古い家では僅かな勾配しかないケースが目立ちます。現在の新築一軒家は一般的に下水管1メートルにつき2センチの勾配が付けられており、節水トイレの弱い水圧でも汚物が流れます。一方、古い家だと節水トイレの水圧では流れにくくなることがあるのです」 そうした自宅のトイレを節水タイプに替える場合、事前に下水管の状態を調べることが重要だ。
「便座の向き」を考慮しないと転倒リスク高まる
老後に備えてトイレをバリアフリー改修する際にも落とし穴がある。自身も車いすを利用する一級建築士の阿部一雄氏が語る。 「『便座の向き』を考えずにリフォームしてしまうケースが多いのです。便座が入り口に対して向き合うように真正面を向いている家が多いですが、体の不自由な人にとって体を180度回転して便座に座る動作は思いのほか難しい。無理に体を回転させようとすると、転倒リスクが高まります。 将来の介護生活を考慮してトイレをリフォームする場合は、手すりの設置や節水トイレへの変更を考える前に、便座の向きが入り口から真正面を向いているなら横向きに改修しましょう」 大がかりなリフォームをせずにトイレ周りを改善したいなら、持ち運びできる『ポータブル水洗トイレ』という選択肢もある。 「寝室などに置けて大きな工事は不要です。周りをカーテンで囲むようにするといいでしょう」(阿部氏) ポータブル水洗トイレは「ベッドサイド水洗トイレ」(TOTO)といった名称で販売されている。 「介護保険サービスが使え、都道府県の指定を受けた業者で購入すると最大10万円まで補助金が出ます」(同前) ※週刊ポスト2024年11月22日号