FRB利上げ、むしろ景気の追い風だとしたら-逆張り論理に脚光
アインホーン氏は2月、ブルームバーグのポッドキャスト番組で「金利が一定の水準を割り込むと、実際には景気が減速する」と語った。景気減速を避けるために米金融当局は利下げに踏み切る必要があるとの議論は「実に奇妙だ」という。
同氏は「状況は極めて良好だ」とし、米金融当局が利下げすることで「誰かを助けるとは思わない」と述べた。
とはいえ、明らかにエコノミストや投資家の多くは、金利上昇が成長を阻害するとの従来の原則をなお固く信じている。その証拠として挙げているのが、クレジットカードや自動車ローンの延滞増加や、雇用の伸びが依然として堅調ながらも鈍化している点だ。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、主流派を代弁して新たな理論は「的外れ」だと述べる。しかしザンディ氏ですら、「金利上昇による経済への打撃は過去に比べると少ない」と認めている。
新たな理論の支持者へと転向した人々と同様に、ザンディ氏は経済の底堅さを巡ってもう1つの重要な要因に言及している。米国民の多くはコロナ流行時に住宅ローンを30年物の超低金利に固定し、利上げに伴う痛みの大半を免れた(これは利上げに応じて住宅ローン金利も急ピッチで上昇する他の先進国との重大な違いだ)。
ビル・アイゲン氏は、米金融当局が利上げに着手した頃、ウォール街では経済が破滅的な打撃を受けるとの予測が支配的だったと苦笑する。業界関係者は「経済が崩壊するため、1.5%や2%を超える水準に引き上げることはないだろう」とみていたと皮肉交じりに話した。
JPモルガン・チェースの債券ファンドマネジャーであるアイゲン氏は、新理論の全面的な支持者ではない。どちらかというと、理論の大まかな枠組みに共感する陣営に入る。こうしたスタンスから、アイゲン氏は自身のポートフォリオを見直す必要性を感じ、キャッシュを積み増した。この再点検により、同氏は過去3年間においてアクティブ債券ファンドマネジャーでトップ10%に入る。