サントリー「翠」が最初から缶を出さなかったワケ。「絶対に譲れなかった“棚”の確保と“売れる自信”」
自信を持って売れる状態になるまで缶を出さなかった
加えて、メッセンジャーを起用したテレビCMを放映し、「それはまだ、流行っていない。」というキャッチフレーズが大きな反響を呼んだことで認知度も一気に高まった。 しかし、消費者目線からすると、ジンソーダを飲むために、いきなり瓶から買うのはハードルが高い。翠は瓶タイプの商品を市場に出してから2年かけて缶タイプの商品を発売したが、その理由について草薙さんは「失敗できないからこそ、手応えを感じてから缶タイプを出したかった」と語る。 「瓶タイプのみだと、お客様が手に取りづらいと思っていたので、早く缶タイプを出したい気持ちは当然ありました。ですが、まずはしっかりと飲食店を中心に認知を上げていき、ジンソーダがお客様の頭の中で『どこかで飲んだことがある』と想起される状況を作りたいと考えました。 特に缶商品は、売り場の棚の商品改廃で競合他社との配荷争いが激しく、中途半端に出しても初めから売れなかった場合は棚落ち(商品が売り場から外されること)してしまいます。そのため、『これなら売れる』という自信を得たタイミングでないと、缶タイプは発売できないと考えていました」
飲食店を“メディア化”することで認知度向上につながった
そんななか、飲食店で展開するときに意識したのが「飲食店のメディア化」だと草薙さんは説明する。 翠専用のブランドグラスをお店で使ってもらうほか、翠のポスターを掲示してもらいブランドを露出させることで、ジンソーダを想起させることにつながるわけである。 さらには、品質の高い状態でジンソーダを飲んでもらうための飲食店向けセミナーを開くなど、翠の世界観や良質な飲用体験の創出を徹底したそうだ。 「サントリーでは、実際にお客様に飲用いただくときの品質向上にも力をいれています。翠を取り扱いいただいているお店には『氷をぎっちり入れて、翠とソーダを1:4の割合でゆっくり1回混ぜる』という「おいしい翠ジンソーダのつくり方」を伝えるなど、提供品質向上のフォローを行っているんですよね。お店によって、品質のばらつきが出ないよう、『いかにお客様に美味しく飲んでいただけるか』を意識しています」 こうして2022年3月に翠の缶タイプを発売したところ、2ヵ月で1,400万本出荷という結果に。 各メーカーからさまざまな缶の新製品が登場することから、どうしても埋もれがちになるが、「飲食店でジンソーダを飲んだ体験が下地となり、老若男女問わずに幅広い年代のお客様に購入いただいていた」と草薙さんは述べる。