「なぜ私が不合格になったのか」――医学部不正入試、被害女性の苦悩と闘い
三浦さんの代理人を務める金裕介弁護士はこう話す。 「採用などにおける裁量の問題は、大学に限らず、昔からある問題です。例えば、企業が、信仰や思想を理由としてある人を不採用にすることについて、これまでに何度か法廷で争われてきました。そして、企業がどういう人物を社員として迎え入れるかは、採用の自由がわりと広く認められています」 「大学にも自治があり、広く尊重されています。しかし、本件の特徴は、一律減点もしくは加点という明らかに目に見えるかたちで、組織的に差別的な基準を適用して合否判定を行っていたことです。誰か一人でも『これはまずい』と言わなかったのか、率直に驚きでしたし、世間に衝撃を与えたのはそこですよね」
なぜ医学部にだけ問題が?
東京医大の得点操作が明るみに出たあと、文部科学省は、医学部医学科を置くすべての大学に緊急調査を実施した。2018年12月に出した最終まとめで「入学者選抜の公正性に疑念を抱かせ、大学教育に対する信頼を損なう事態」と言明した。 しかし、当の医療界から「女子の一律減点は必要だ」という声が上がった。例えば、医療者向け求人情報サービス・メディウェルの医師会員を対象に実施したアンケートでは、次のような意見が寄せられた。 「医療の現場は男性でないと無理だと思う、それだけ現場は激務であり、権利を主張する医師は男女含めいらない」(50代男性、腎臓内科) 「女医が家事、育児を理由に負担の軽い科を選ぶ限り このようなことはなくならない」(50代女性、内科) (出典:https://epilogi.dr-10.com/articles/3146/) これらの意見は一部ではなく、女子一律減点は「必要な措置」「良いことではないが必要悪」と答えた人が、「不必要であり理解できない」と答えた人を上回っている。 金弁護士は「大学って本来は学問を修める場ですよね」と話す。 「医学部以外の学部ならば、卒業後の進路はさまざまです。入試では、大学で学問を修めるのに適した人を合格させればいい。ですが、医学部の場合、入試がある種、就職試験として機能している側面があります。要は、医療現場のひずみや労働環境の問題が、入試という入り口に押しつけられてしまっているんです」