「なぜ私が不合格になったのか」――医学部不正入試、被害女性の苦悩と闘い
2018年に発覚した医学部の不正入試問題。被害者の一人、三浦さくらさん(仮名、30代)は受験から9カ月以上経って、3つの大学から「不合格は誤りだった」との連絡を受けた。大きく狂わされた人生。現在、三浦さんは別の大学の医学部に通いながら、3大学に損害賠償を求める訴訟を起こしている。何があったのか真相を知りたい――三浦さんのこれまでと今の思いを聞いた。(取材・文:長瀬千雅/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
自分が被害者だとわかるまで
三浦さんは、東日本のある大学の医学部3年生だ。コロナ禍で遠隔授業になったりしたが、充実した毎日を送っている。しかし、のどに刺さった小骨のような引っかかりが、今も抜けずにいる。 2018年8月、東京医科大学が同年2月の入試で、受験生に説明なく、女性や多浪生の得点を一律に低く調整していたと報じられた。三浦さんはそれを聞いて動揺した。まさにその年に同大を受験して、不合格になっていたからだ。
三浦さんは社会人を経験しての受験生、いわゆる「再受験生」だった。2014年に医療系の大学を卒業していったん就職。2年後に退職し、医学部を目指して受験勉強を始めた。 1年目の2017年は国公立大学を受けて不合格。2年目は絶対に受かりたいと思い、私立も視野に入れた。「うわさですが、再受験生は20代じゃないととってくれる大学がなくなると聞いていたので」 20代最後となる2018年の大学受験。しかし結果は5校受けてすべて不合格。そのうちの1校が東京医大だった。 もともと受験は2年までと決めていた。諦めたほうがいいのだろうか。自信を失い、貯金も尽きかけていた。受験勉強を続けるなら、家族に経済的な援助をお願いしなければいけない。心苦しかったが、医師になりたい気持ちが勝り、もう1年だけやろうと決めた。 東京医大の得点操作が発覚したのはその年の夏だ。ニュースを見て、2、3日勉強が手につかなくなった。「(私が女性で再受験生なので)正当に評価してもらえないのではないか」という不安に襲われた。