賃貸大家ユニット・半田兄弟、老朽化アパート再生のカギは「家庭菜園とDIY」! 入居率も30%アップまでの軌跡 福岡県久留米市
福岡県久留米市東櫛原町にある「H&A Apartment(ハンダアパート)」は、半田啓祐さん(兄)と満さん(弟)からなる大家ユニット「H&A brothers」が管理運営する賃貸アパートです。築古ですが、家庭菜園や飲食事業者の誘致、マルシェの開催などの工夫で、入居者と近隣の人との交流を促し、新たな繋がりを地域にもたらしています。従来の「大家さん」のイメージを覆す、「コミュニティデザイナー」とは? 豊かな暮らしができる場づくりを地方都市で行うふたりに話を聞きました。
親が管理するアパートが老朽化、DIYと家庭菜園付きアパートで再起
西鉄久留米駅のひとつ隣の小さな櫛原駅前にある「ハンダアパート」。敷地内には、「半田ビル」と「アベニール櫛原」の2棟のほか、菜園広場やデッキがあります。1階にあるパン屋さんやカレー屋さん、コーヒースタンドなどのお店やアパートで開催する駅前マルシェには、近所の人も多く訪れます。
左から半田啓祐さん(45歳)と満さん(44歳)。
H&A brothersのふたりが、両親の管理していたアパートを引き継いだのは2013年ごろ。10年の月日をかけて、住民参加型のワークショップや地域イベントを通じて入居者さん、ご近所さんが繋がり合う場を育てていきました。現在は、「コミュニティデザイナー」として、職人シェアオフィス「BASE」の運営、リノベーション設計施工、DIYワークショップの企画・運営、空き家対策や移住定住支援など行政や大学と連携した幅広い街づくりプロジェクトに取り組んでいます。
コアメンバーを務める久留米移住計画のオンラインイベント。うきは市・大川市・大木町・小郡市・久留米市・大刀洗町の6市町が集まり、筑後エリアの魅力や移住のリアルを発信。
もともと東京の飲食チェーン店で働いていた啓祐さんが、不動産業界に関わりはじめたキッカケは、両親が管理していた古い貸家を取り壊した後に、新築アパートを建てるタイミングでした。ところが、建築会社が倒産し、数百万の資金が戻らない事態に。「このまま何も知らないで不動産業に関わるのは怖い」と考えた啓祐さんは、地元の不動産会社に転職して経験を積みました。 家業であるアパート経営に関わりはじめたのは、2010年ごろ。当時、両親が管理していた半田ビル(1981年築9戸)が老朽化し、空室が増加。苦労するふたりを見て、空室対策や入居者募集に取り組むことになったのです。 「何か手を打たなければと焦る気持ちでしたが、長年アパート経営をしていた家族の危機感は薄く、父の賛同を得られず、予算もありませんでした。業者に頼めないなら自分でやるしかないと、ぼろぼろの外観を修繕するため、ひとりで、外壁を塗ったり、花壇をつくることからはじめました」(啓祐さん)