「新型プリウス」何が変わったのか? トヨタのクルマづくりの転換点
では回生システムの方はどうなのか? こちらは主に制御の緻密化が行われた。ハイブリッドのバッテリーは、満充電から空っぽまで使うようなことはしない。そうやって使うとバッテリーの寿命が著しく悪化するのだ。一般的に言って上の20%と下の40%はあまり使わない。だからバッテリーは真ん中40%程度だけが使われている。ただしトヨタは公式にその数値を明らかにしていないので、あくまでも一般論だと言っておく。 この普段使う領域をSOC(State of charge)と言うのだが、新型プリウスのニッケル水素バッテリーの場合、セルが168個ある。その一つひとつは当然、充電状況に微妙な差がある。SOCを維持しながら、つまりそれはバッテリーの寿命に配慮しながら、使える領域を最大化するために、新型プリウスはこのセルひとつひとつの充電状況をチェックする制御を取り入れた。これによって、既存電池の性能をより大きく使うことができるようになったことも、燃費向上の理由の一つである。
乗り心地とハンドリングが向上
旧型プリウスの最大の課題は上述のように速度制御だったが、もう一つは乗り心地を含むサスペンションの問題だ。新旧のプリウスはリヤサスペンションの形式が違う。旧型は中間連結型トーションビームと呼ばれるもので、現在極めてポピュラーかつ安価なシステムだ。それに対して新型ではダブルウィッシュボーンが採用されている。コストはずっと高い。これを導入したところにトヨタの覚悟がうかがい知れる。 中間連結型トーションビームはアルファベットのH字型のアームで構成されている。Hの上2点がリヤタイヤの前方でシャシーにマウントされており、そこが揺動軸になっている。タイヤは下の2点に取り付けられている。要は車体前後方向両サイドにアームを取り付け、その左右方向の剛性不足を補うために真ん中を棒でつないでいるわけだ。この棒はわざとねじれる様な構造になっており、左右のアームが多少の自由度を持って動ける様になっているわけだ。 さてこのサスペンションの場合、タイヤが横向きに押されるとH字そのものが車体の方向とズレてしまう。何故なら揺動軸には振動の遮断のために大容量のゴムブッシュが入っており、中間連結型トーションビームでは、力の入ってくる方向別にゴムのゆがみ容量を変えて対応するのが難しいからだ。つまり乗り心地を諦めるか、サスの位置決め精度を諦めるかのトレードオフになりがちなのである。それはとうてい割り切ることができないので、旧型のプリウスはどちらにも難があるという残念な結果になっていたのだ。