盗撮オフ会に潜入、アップル社へ“直撃”…NHKが「子どもの性被害」問題で大奮闘のワケ
調査報道メディアとNHKが共同で取材 Tansaの辻記者を前面に出して
6月15日放送の「NHKスペシャル 調査報道・新世紀 File3 子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇」(後編)は、児童ポルノ映像などの被害防止策が、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業の経営判断で放置されている疑惑に迫った。 この放送でNHKの取材班がタッグを組んだのが、ネット上で調査報道の記事などを発表している調査報道メディアTansaだ。編集長の渡辺周さんは、かつて朝日新聞で福島第一原発事故などの調査報道を手がけた敏腕記者で、筆者も大学の授業にたびたび来てもらっている。彼の同僚の辻麻梨子記者も加わってNHKとの共同取材班は結成され、番組では辻記者を前面に出す構成で放送していた。 SNSの盗撮コミュニティでは、子どもたちの動画や画像に値段がつけられ、様々なかたちで売り買いされている。ビジネスとして金儲けの手段になっている実態があるのだ。 こうしたコミュニティで繰り返し出てくる言葉が「アルバムコレクション」だ。これはアプリの名称で、アップストアの写真・ビデオ部門ランキングで1位になったこともある。このアプリが盗撮など、子どものわいせつ動画の共有や販売に使われ、児童ポルノの温床になっている。 このアプリは権利が売買され、運営者が頻繁に変わっていた。Tansaは2年前から調査報道を進め、オンライン記事を発表してきた。ITの知識や技術に精通したホワイトハッカーに接触し、プログラムの分析を依頼。すると「アルバムコレクション」の前に「写真カプセル」や「動画コンテナ」という名前のアプリで、サービスが引き継がれてきたことが判明した。この2つのアプリは、ユーザーが児童ポルノ禁止法違反で逮捕され、終了してきたサービスである。 過去の2つのアプリを運営していた会社を調べてみると、シンガポールに住むT氏という日本人に行きついた。4年前にマレーシア在住のN氏に譲渡したという。N氏はさらにS氏と日本人2人に譲渡。N氏の会計事務所によれば、年間億単位の取り引きがあったという。 では、こうしたアプリを販売しているアップルの責任はどうなるのか。悪質な児童ポルノの動画が売買されることでアルバムコレクションは利益を上げ、その収益の一部は間接的にアップルに入る仕組みになっている。児童ポルノで子どもたちを性的に搾取して利益を上げているビジネスを追っていくと、こうした巨大プラットフォーム企業のありように行きついていく。