盗撮オフ会に潜入、アップル社へ“直撃”…NHKが「子どもの性被害」問題で大奮闘のワケ
責任をとろうとしない巨大プラットフォーム企業
Tansaの辻記者は、堪能な語学力を駆使しアップルのアプリ審査部門の統括をしていた元幹部にもインタビューを敢行。「アップルはアプリを承認する時は厳格な審査を行うが承認した後のチェックは重視していなかった」という証言を引き出していた。 こうした巨大プラットフォーマーに対して責任を問う声は、世界各地で日増しに強まっている。たとえばメタ社では、13歳から15歳の子どもたちの8人に1人が、1週間で性的な嫌がらせを受けているという実態を内部調査で把握していたという。しかしザッカーバーグCEOら上層部は調査結果を公表せず、対策を取ろうとしなかったという。元幹部のアルトゥロ・ベハール氏はメタを退社し、米議会の公聴会などでこの事実を告発した。ザッカーバーグ氏らを批判する声が強まっている。 2022年に成立したEUデジタルサービス法や2023年成立のイギリスオンライン安全法は、児童ポルノなど違法な情報の削除対応や有害情報からの未成年の保護を義務づけ、違反には企業側に巨額の制裁金を定めている。 児童ポルノの恐るべき実態の画面を関係者に見せつつ、規制すべきではないのかと問うたTansaの辻麻梨子記者。巨大プラットフォーマーと対峙する姿勢は冷静で的確ながら、その裏には子どもたちを性的に搾取するシステムへの怒りが見え隠れし、共感をおぼえた。報道機関が闘うべきは、こうした実態を止める技術力もありながら、積極的に動こうとしない巨大企業だ。そして規制しないで放置する各国政府のありよう。辻記者の眼差しの先には、こうした現在の経済なシステムの構図が見えてくる。 取材班は当初、アップストアを管理するアップルの日本支社に実態を伝えて質問状を送ったものの、回答はなかった。そこでアップル本社のティム・クックCEOに直接、メールを送り、取材した児童ポルノの問題の深刻さを伝えて「私たちは被害を止めたいです」と訴えた。すると3日後に突然、アルバムコレクションはストアから姿を消し、その後、アプリのサービス終了が公表された。