メイド喫茶の広告を期末テストに出題!世田谷学園のスゴいジェンダー教育…「道徳を押し付けない」独自科目の中身
■ クラスで正解は2人、考え抜かれたジェンダークイズ 下記の文章A~Fを意味が通るように並べ替えてみよう。 「火災が発生」 A:数時間後、消防隊が到着し、がれきの間にいる人を救いました。 B:父親はなくなってしまいました。 C:あるとき大きな火災が起きて、道路に建物が倒れてきました。 D:たまたま歩いていた男性と、彼の娘は建物のしたじきになってしまいました。 E:消防士は「なんでここに私の娘が!」と悲鳴をあげました。 F:彼の娘は、がれきの間にはさまれ、重傷を負いました。 これがジェンダー・バイアスに関連する問題であることを意識していれば、難しくはないだろう。答えは、C→D→B→F→A→Eである。でも「いまざーっとみんなの解答を見てみたら、このクラスで正解は2人だけでした」と猪俣さん。 消防士は男性に違いないと思い込んでいると、つじつまが合わなくなるのだ。同性婚が認められている海外が舞台であれば、男性同士のカップルという想定もできる。 という導入のあと、「ジェンダー」と「セックス」の違いについて扱う。「セックス」が生物学的な性別であることに対して、「ジェンダー」は社会的・心理的につくられる性的役割分担のことで、いわゆる「男らしさ」や「女らしさ」に結びつけられる概念であることを説明する。 「というわけで、これからジェンダーについて学んでいきます。総合社会のなかで、僕がいちばん好きな単元です」と言いながら、猪俣さんはテキストを配布する。ここまでで1コマ。
■ 上野千鶴子さんの東大入学式祝辞を題材に 2コマ目の冒頭には、学校においてジェンダーを意識させている場面を生徒たちに尋ねる。制服、出席簿、選択科目による男女の偏りなどがあげられる。「SDGs」「この授業」「男子校」という意見もあった。「昔は、男子は家庭科やらなかったんだよ」と猪俣さんが言うと、「えーっ!」「やばっ!」というどよめきが起きた。 ある高校で実施された、男子と女子が制服を入れ替えて登校する試みも報道写真つきで紹介された。生徒のなかから、「これ、やりたくないのにやらされるのは人権問題だと思う」という声が即座にあがる。 まさにこれから扱うジェンダーの問題の本質に迫る発言である。やりたくないことを、「女性だから」という理由で押しつけられることがある。最近では男子校でも、「男らしさ」の押しつけには抵抗を示す生徒も多い。 実体験を織り交ぜながら、日常に潜むジェンダー・バイアスの事例に一通り触れたのち、猪俣さんはある女性の写真をスクリーンに映し出す。 「この方ご存じですか?」 「存じ上げません」 「上野千鶴子さんという方です」 東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子さんである。 「2ページ目を開いてください。そこから4ページにわたって、このひとが2019年に東大の入学式で行ったスピーチの全文が掲載されています。これが結構有名なスピーチなんです。ジェンダーについて語ったものです。実際の映像があるので、文字を追いながらでもいいので、それをご覧ください」 ◎授業で視聴した動画はこちら(15分程度、TBS NEWS DIG Powered by JNN) 動画を見たところで2コマ目は終了。次の授業でスピーチの中身について話し合うというので、3コマ目も見学することにした。が、そこで思いがけないことが起こった。