「伝統のお酢」が「酒」判定で7000万円追徴課税、それでも死守した製法 不屈のメンタルを持つ5代目当主が目指す“モテるお酢屋”とは
京都府宮津市で130年の歴史を誇る老舗お酢屋「飯尾醸造」。看板商品の富士酢が漫画「美味しんぼ」で「真心に応える食品」として取り上げられるなど、真摯なもの作りを貫いてきた。5代目当主・飯尾彰浩氏(49)は、「真面目」な企業姿勢はそのままに、「モテるお酢屋」というユニークな経営理念を新たに提唱している。顧客やスタッフ、地域から深く愛される企業に育てた極意を聞いた。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆「嘘がないもの作り」でブランドを確立
――「モテるお酢屋」という経営理念は面白いですね。 ユーザーを筆頭に、スタッフ、原料生産者、地元、生産者仲間、取引先という6者のステークホルダーから愛される会社であろうと努力しています。 例えば、米酢の原料生産者からモテるために、お米の買取価格を農協の3倍にする。地元からモテるために、里山の景観保全に取り組んだり、古民家をレストランに改装したりして、街の活性化に寄与する。 能登半島地震が起きた3日後には、少しでもユーザーの力になりたいと、4トンの水を現地に運び込み配って回りました。 「うちのために何かしてください」とお願いするのではなく、「私たちが貢献できることは何か」と矢印を逆にして考える。 6者からどう見られているのかを常に意識し、期待に恥じない会社であるように知恵を絞り続けています。 ――商品だけでなく飯尾醸造という企業そのものにファンが付いています。 ブランド確立には、競合との「意味ある差」が必要です。 それは商品・サービスだけでなく、会社や組織、そこに属する個人の生き方においても言えると思います。 当社の基盤は、祖父や父が代々受け継いできた“嘘のないもの作り”です。 原料の生産地や製造工程までフルオープン。 ここまで透明性の高い醸造企業は他にないでしょうし、だからこそユーザーから信頼されています。 その想いを裏切らないよう、私自身も公私を問わず“嘘のない”人間でありたい。 私、ゴルフを一切しないんですよ。農薬で維持されているゴルフ場で遊ぶことは、祖父の代から掲げている「無農薬米を使う」というポリシーと相反しますから。