「非常大権で国を正常化」…尹大統領、3月から内乱を構想
検察特別捜査本部、資料を公開
「12・3内乱事態」を捜査中の韓国検察は、少なくとも今年3月から尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が非常戒厳を念頭に置き、キム・ヨンヒョン前国防部長官などと数回にわたり戒厳について話し合ったと結論付けた。尹大統領はキム前長官と軍の主要指揮部などが集まった席で、時局関連の懸念を並べたうえで、「非常大権(国家危機時に大統領が施行する非常措置)しか方法がない」と数回発言したことが取り調べで分かった。 検察非常戒厳特別捜査本部(本部長:パク・セヒョン高等検察庁長)は27日、キム前長官を内乱の主要任務従事などの疑いで拘束起訴し、「尹大統領は少なくとも3月から非常戒厳を念頭に置き、キム前長官らと数回にわたり(戒厳について)話し合った事実を確認した」とし、「11月からは(非常戒厳に向けた)実質的な準備が進められた」と明らかにした。 検察特捜本が公開した資料によると、尹大統領が非常戒厳を念頭に置いて戒厳に言及したのは、今年3月末から4月初めにかけての時期。尹大統領は当時、ソウル鍾路区三清洞(チョンノグ・サムチョンドン)の大統領安全家屋(秘密の活動に用いる一般家屋)で、シン・ウォンシク国防部長官やチョ・テヨン国家情報院長、キム・ヨンヒョン大統領警護処長、ヨ・インヒョン国軍防諜司令官(肩書はすべて当時)らを呼び、国の懸念を示しつつ「非常大権を通じて切り抜けるしか方法がない」と述べた。5~6月にキム前長官、ヨ司令官と三清洞の安全家屋で会った際も、「非常大権や非常措置でなければ、国を正常化する方法がないのか」と戒厳の必要性を繰り返し言及したという。 尹大統領は戒厳発言と共に、戒厳当時の逮捕リストに上がった主要政治家や労働界などに対する批判的な発言をしたという。尹大統領は8月初め、大統領官邸でキム前長官とヨ司令官を呼び、政治家と民主労総関連者などに言及し、「現在の司法体系の下ではこういう人らに対してどうすることもできない。非常措置権を使って措置を取らなければならない」と述べた。 今年の国軍の日にも戒厳に関する言及は続いた。10月1日の軍事パレード後、尹大統領はキム前長官やヨ司令官、クァク・チョングン特殊戦司令官、イ・ジヌ首都防衛司令官らを官邸に呼び、手料理でもてなした。そして政治家や新聞・放送界、労働界のいわゆる「左翼勢力」について話しながら、非常大権に触れたという。先月9日、キム前長官と特殊戦・首都防衛・防諜司令官を国防部長官公館に集め、「特段の措置以外は、(時局問題を)解決する方法がない」と述べたというのが検察の捜査の結果だ。 「非常大権・非常措置」を口癖のように言っていた尹大統領は、今年11月末から具体的に非常戒厳の実行計画を立てたという。キム前長官は先月24日から今月1日まで、自身の公館などで、2017年3月の朴槿恵(パク・クネ)政権時代に国軍機務司令部の主導で作った戒厳令文書と、過去の非常戒厳令布告令などを参考にし、戒厳宣布文と国民向け談話文、布告令の草案を作成した。戒厳令の3日前の先月30日には、キム前長官は自身の公館でヨ司令官に「戒厳令を発令して国会を確保し、中央選挙管理委員会の電算資料を確保して、不正選挙の証拠を探さなければならない」と伝えもした。 尹大統領は戒厳の2日前に、兵力動員の状況をキム前長官に尋ねたという。尹大統領は1日、官邸でキム前長官に「いま非常戒厳をすれば、兵力動員はどのように動かせるのか、戒厳をしたときに必要なのは何か」と尋ねており、キム前長官は「少数だけが出動すれば、特殊戦司令部および首都防衛司令部の3000~5000人ほどが(動員)可能だ」と答えたという。キム前長官はこの席であらかじめ用意した戒厳宣布文と国民向け談話文、布告令の草案を尹大統領に報告し、尹大統領は布告令の「夜間通行禁止」の部分のみ削除するよう指示したという。 検察特捜本の関係者は、尹大統領の戒厳謀議を始めた時期について、「具体的に(尹大統領の戒厳発言が)確認された部分を遡ってみたところ、3月に至った」とし、「昨年の状況などについては捜査を進めている」と語った。尹大統領が非常戒厳を構想した時期がさらに繰り上げられる可能性もあるとみられる。 カン・ジェグ、チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )