シリア難民をどうするか…アサド政権崩壊後のいま「ドイツで起きていること」
アサド政権崩壊に狂喜したドイツのシリア難民
2024年12月8日、シリアのアサド政権が倒れた。翌日のドイツでは、その報に狂喜したシリア難民が「祖国解放」を祝って街に繰(く)り出し、各地で歌えや踊れやの大騒ぎとなった。 【写真】こんな北朝鮮、見たことない…!写真家が29年間撮り続けた「凄すぎる光景」 2023年末日、ドイツで正式に届出のあるシリア人の数は97万2000人だった。そして、そのうち71万2000人が、シリアの内乱、あるいは、アサド前大統領の弾圧を逃れてやってきた人たちで、難民として登録されている。ドイツで庇護されているグループとしては、ウクライナの120万人に次いで2番目に多く、ほぼ福井県の人口に相当する。 一時は、良い労働力になると期待されたシリア難民だが、12月16日の第2放送の報道によれば、就労している人が21万人、「市民金」という生活保護で暮らしている人が51万8000人だそうだ。 また、シリア人の犯罪容疑者は3万4341人で、すでに性犯罪で有罪となった人が2099人。難民は、働いていようが、いなかろうが、犯罪を犯そうが、基本的人権に見合った最低限の衣食住が保証されている。 ジュネーブの難民条約によれば、難民資格は、彼らを脅かしていた状況が改善されれば取り消すことができる。つまり、内乱のために逃れてきていたシリア人たちは、それが終結した今、本来ならば母国に戻らなければならない。一方、条約は、難民資格を取り消すためには、彼らの母国の政治的、および人道的状況が、根本的に、しかも持続的に改善されていなければならないとも規定する。 では、シリアの政治的、人道的状況が、根本的、持続的に改善されるのはいつのことか? そもそも本当にそういう日が来るのか? 政治的、人道的状況が、根本的、持続的に良好である国など、地球上にいったいどれだけあるのだろう。
ドイツ国民の感情と本音
22年のBAMF(連邦移民難民局)などの調査では、13年から19年に入国したシリア人の94%が、ドイツでの永住を希望しているという。BAMFは内務省の管轄で、現在、社民党のフェーザー内相の下、なるべく多くの難民に難民資格を与え、たとえ重罪を犯した難民でも母国送還はしないという方針だ。つまり、BAMFの願いは、94%のシリア難民のそれと一致する。 ただ、国民の感情がそれらと一致するかというと別の話だ。2015年よりほぼ無制限に難民を受け入れてきたドイツで、実際にその難民を押しつけられたのが全国の自治体と一般の住民である。 難民に対する人道的な配慮が求められる一方、あまりの数の多さに、お金はもちろん、住宅、職員、教師などすべてが不足し、さらに急激な治安の悪化が、住民を悩ませている。つまり、新興の政党であるAfD(ドイツのための選択肢)が、10年来指摘し続けていたさまざまな問題が現実となっているわけだ。それは、AfDをナチと誹謗し続けてきた既存の政党にとっては、誠に不都合な現実だった。 そんな中、アサド政権の崩壊である。さあ、ドイツにいる70万人のシリア難民をどうするか? ドイツは奇しくも2月末の総選挙を見据えての選挙戦の真っ最中。これらシリア難民が、突如として政治案件化したのは当然のことだった。では、各党の主張は?