自己肯定感は低い、でもそのほうが成長できる――上白石萌音が抱え続ける「マイナスの焦り」
エゴがないと語る一方、『あの歌』の関係者向け資料には、上白石自身による長い解説文が寄せられている。そもそも上白石は1998年生まれ。70年代や80年代は体験すらしていない。 「タイムスリップしている感覚です。私、時代劇が好きなんです。昭和や、それ以前の時代に憧れがありますね。昭和っぽいってよく言われるし。見た目もあると思いますが、中身もけっこうアナログ好みだったりするので、『古い感覚を持ってるね』って。手紙も好きです。CDも買いたいし、電子書籍も読めない(笑)。質感や手触りっていうのが好きですね」 そんな上白石だが、同世代とのズレを感じることはないという。 「ちょっとオールドソウルを持った子たちと仲良くなりますね。手間を好む感じ。友達とは文通もします。意外に書くのが好きな子が多くて。LINEも普通にするんですけど、楽しくって文通もする。会ってるときもずっとスマホを触ってる、みたいな友達はいないです」
いつも歯がゆさは抱えている
役者、歌手、声優とジャンルを問わず活躍を続けている上白石。一見、順風満帆にもみえるが、その裏で抱える葛藤も大きい。 「いつも歯がゆさは抱えながらやっています。『もっと時間が欲しい、もっと丁寧にやりたい』っていう思いは常に抱えていて。それがエネルギーになっているところはあるかもしれないです。焦りというか。高校生時代も、仕事をしていたから人より遅れるんですよ。それが悔しくてめっちゃ勉強する。そのマイナスの焦りとか悔しさがガソリンになってる感じがしますね。貪欲でいたい気持ちはあります」 その貪欲さが、さらに新しいジャンルでの活動を切り開いてもいる。 「9月にエッセーを出すんですけど、その執筆中も、1分考えて切り替えれば済むようなところを、私は半日とか考えちゃうタイプで。なんて面倒くさい人間なんだって(笑)」
「表現することへの気合の入れ方は全部一緒」とも語るが、そこまで多方面にエネルギーを注ぎ続ける姿勢を維持するのは大変ではないかと聞くと、ときには自己を肯定する必要性もあると教えてくれた。 「ちょうどいいところで自分にめっちゃ甘いんです。『ああ、よく頑張った、偉いよ』って褒めて甘やかして、その日は『寝る!』みたいな(笑)。ちゃんと褒めるっていうのは大事だと思います。オンオフがわりとできやすいのかなって。AB型というのもあるかもしれません(笑)」