世界最大級の木造建築物に福島・浪江町の木材 大阪・関西万博会場のシンボル「大屋根リング」 被災地の林業再生へ
最先端の技術による演出に、自然と調和するアートの世界。2025年4月に160の国や地域が参加する「大阪・関西万博」がいよいよ開幕する。福島県も独自の展示ブースを出展するほか、期間中には国内外の被災地と連携し今後の災害に備える「創造的復興サミット」が開催される計画だ。 そんな万博の会場で、ひときわ目を引くのが世界最大級の木造建築物、円周約2キロの巨大な「木造リング」。実はここに、福島との深いかかわりがあった。 【画像】真っすぐで良質な木材を大坂・関西万博の会場へ
良質な木材が育つ福島県
巨大リングを構成する木材の一部を製造した、福島県浪江町にある「ウッドコア」。2024年3月、万博会場に向けて福島県産の木材が出発した。 取締役の朝田英洋さんは「福島のスギはスラっときれいに真っすぐ育つ。あまり曲がったものが出ないので、福島は非常に全国的から見ても良いスギが育つ地域」と説明する。 福島県の浜通りは雪が少なく、ほどよい寒暖差があることから丈夫で良質なスギが育つ環境だという。朝田さんには、この自慢の木材を通して、どうしても伝えたい思いがあった。
失われた林業の未来
2011年3月の東日本大震災で、福島県浪江町は津波に襲われ、原発事故で全町避難を余儀なくされた。 町全体の面積の73%を森林が占め、林業が盛んだった浪江町はあの日を境に一変。まもなく創業100年を迎えようとしていた朝田さんの会社も運営ができなくなり、従業員はバラバラとなり、朝田さんも東京へと避難した。 事業の再開を目指すも、なかなか合う土地が見つからず、いつのまにか震災から3年。町内の除染が進み、事業が再開できるようになったことから、ふるさとで再び一歩を踏み出した。 朝田さんは「やはり、この浪江の住みやすい土地で、先祖代々から受け継いだ会社もあった。そこでやっていきたいという思いは、かなり強くありました」と語る。
揺るがぬ信頼と新たな挑戦
これまで放射線量が出荷の基準を超えたことはないが、木材を加工する前と加工後の出荷前、2回の放射線量の測定は欠かさない。朝田さんは「放射線検知器・セシウムチェッカーで、1本1本木材の放射線をはかっている。ほぼこの地域に入ってきた木材からは出ないが、安全対策ということで」と説明する。 震災のあと大きく落ち込んだ福島県内の木材生産だが、こうした生産者の努力もあり震災前と同じ水準にまで回復してきている。 また「ウッドコア」では、“強力で割れにくい”木材を作るため、電磁波で熱を発生させ木の板を貼り合わせる機械を国内初導入した。8時間以上かかっていた接着作業が数分ほどに短縮され、自慢の木材を速やかに流通ルートに乗せることができるようになった。
浪江町の林業再生へ
福島の林業に必要なものは「揺るがない信頼」と「新たな挑戦」。「ウッドコア」として、初めての大仕事となる万博は業界の未来を占う舞台となる。 朝田さんは「福島の木材を大阪・関西万博で非常に多く使ってもらっていますので、この福島・浪江の林業再生に向けて、山を整備しながら今後何十年・何百年と繋がるような林業再生を目指していきたい」と語った。 半年で2800万人の来場を見込む「大阪・関西万博」。福島の魅力が会場を包む木の香りとともに世界中の人々に届くことに期待したい。 (福島テレビ)
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