都市対抗ノーノー達成の阿部良亮は無印からドラフト候補に急浮上するのか
第88回都市対抗野球が行われ、日本通運の阿部良亮(24)が21日、対パナソニック戦でノーヒットノーランを達成した。打者29人に122球を投げ3四死球9奪三振の内容でチームをベスト8へ導いた。 2011年の第82回大会で完全試合を達成したJR東日本東北の森内寿春以来5人目。ノーヒットノーランだけで見れば、第25回大会の川崎トキコの岡本教平以来、63年ぶり3人目となる。 東京ドームが異様な空気に包まれた。バックスクリーンに示されたスコアボードのパナソニックのヒット数はゼロのまま。9回。大記録に向かって阿部がマウンドに上がった。 先頭の諸永にカーブを低めに落として一塁ゴロ。続く田中をアウトローのストレートで見逃しの三振、代打・阪口にも、追い込んで外いっぱいにストレートを投じると、そのバットは動かなかった。 グラブをパンと叩く控えめな小さなガッツポーズ。野手から祝福を受けてやっと笑顔が弾けた。 「素直に嬉しいです。驚いています。出来すぎ。後ろにいい投手がいるので最初から飛ばしていきました」 ピンチもあった。5回には先頭の柳田を四球で歩かせ盗塁を許す。一死から死球を与え、一死一、二塁にされたが、深瀬をインサイドのツーシームで見逃しの三振。続く三上には、外の低めにストレート。連続の見逃しの三振で切り抜けた。阿部本人は「6回からノーヒットノーランを意識した」という。 8回には、3者連続の代打攻勢を仕掛けられ、二死から代打・小熊にセンターへ抜けそうなライナーを打たれたが、阿部はその鋭い打球に反射的に左手を伸ばして鷲掴み。「必死に捕りにいって良かったです」。まさに記録をもぎとった。 バランスのいいフォームからの本格右腕。ストレートは140キロ前後だったが、碁盤の目を埋めるような正確なコントロールが光った。インサイド低めにツーシームを落とし、アウトローにストレート。引退した広島の黒田博樹をほうふつさせるような、ホームベースを端から端まで使うピッチングだった。9個中6個が見逃しの三振。そのほとんどがアウトロー。名将、野村克也氏が「投手の原点能力」と評するピッチャーの生命線のボールである。 だが、ネット裏のプロのスカウトリストには、上位になかった無印投手だった。都市対抗の予選でも不振で、本大会のメンバーに入れるかどうか、ギリギリの線にいたという。 埼玉・浦和学院高時代はエースはソフトバンクに3位指名された南貴樹で、阿部は2番手投手だった。東洋大に進むも、2年時にはチームは2部に落ち、卒業時にはドラフト候補に名前が挙がったが、早大の有原航平、亜大の山崎康晃、法大の石田健太ら、大学生のドラフト候補が大豊作の年代で阿部は埋もれた。社会人に進み、昨年、ドラフトが解禁されたが、声はかからず今年が3年目である。安定感はあったが、プロのレベルではスピード不足とみなされ、“一芸”的な特殊球がないこともリストから外されていた理由だった。