きっかけは20年前の豪雨、福井市街地で進む雨水タンク設置 公民館や住宅に「小さなダム」…市が最大半額を補助
集中豪雨時に浸水被害の軽減につながる雨水タンクの設置が、福井県福井市中心市街地の公民館や一般住宅で進んでいる。20年前の福井豪雨をきっかけに導入する動きが出始めた。近年は同市の設置補助事業が追い風となり、まちなかに“小さなダム”が徐々に拡大している。 【写真】一昨年の豪雨で濁流に襲われた福井県の集落 強い降雨により、雨水が下水道や排水路に一度に流れ込むと、排水能力を超えてあふれ出す「内水氾濫」が起きる。建物の雨どいからホースをつなぎ、屋根に降った雨水をためる雨水タンクは水位上昇の軽減につながる。平常時には花壇の水やりや融雪に活用。水道料金の節約につながる利点もある。 2004年7月の福井豪雨では、福井市内で午前9時台に1時間雨量75ミリの大雨に見舞われるなどし、全半壊50軒、一部破損82軒、床上・床下浸水約1万1千軒の被害が出た。堤防が決壊した足羽川左岸側の市街地だけでなく、内水氾濫が起きた右岸側の中心市街地も広範囲に冠水した。 市は15年、福井豪雨以降に実施してきた浸水対策を計画的に進めるため、下水道雨水対策基本計画を策定。17年度に、計画に基づく中心市街地区域(約1510ヘクタール)で雨水タンクの設置補助事業を開始した。100リットル以上が対象で経費の最大2分の1を補助する。容量に応じて上限は2万円から6万円。 昨年度までに19件の補助申請があり、設置された。このうち14件が一般住宅で、容量は500リットル4件、250リットル1件、220リットル1件、200リットル5件、150リットル3件。福井豪雨で60センチ以上浸水した豊公民館には千リットルの雨水タンクがあり、バルブをひねると花壇に散水するほか、蛇口からじょうろに給水して玄関先のプランターの水やりに活用している。200リットルタンクが置かれている松本公民館では、冬季は駐車場の融雪水に使っている。 市雨水対策室の担当者は「大雨の際に雨水を貯留することで下水道の負担が減り、浸水被害軽減につながる」と話し、さらなる設置を呼びかけている。建物内への浸水を防ぐ「止水板」の設置補助も行っている。
福井新聞社