“日の丸半導体”復活をかけ……29歳の新人エンジニア、米国奮闘記 「最先端」への挑戦 “2つの壁”に悪戦苦闘『every.特集』
■ラピダスの挑戦に希望を抱いて入社
難しい用語を話し続ける彼らも、石原さんと同じく今年ラピダスに入社したばかりの新人エンジニアです。出身大学を聞いてみると、石原さんは「(大学院は)東京大学の工学系研究科。(大学の)学部は京都大学」と言います。 他の3人も東北大学大学院修了、北海道大学大学院修了、東京理科大学大学院修了と、“日の丸半導体”復活を背負って立つだけあって、4人とも高学歴でした。 いま、日本ではこうした“優秀な頭脳”がGoogleやAppleなど海外の企業に流出していることが課題になっています。それでも4人は、最先端の半導体を日本で作るというラピダスの挑戦に希望を抱き、入社しました。 1人の新人エンジニアは「リスクよりもチャレンジング、面白そう、チャレンジングなことをしたいということが先行したから、ここに来ているんだと思いますよ」。別の新人エンジニアも「ちょっと変かもしれないけど、リスクがある方が面白い」と言います。
■言語と知識の「2つの壁」に直面
石原さんは、ラピダスとIBMの合同会議に参加しました。しかし、「ソーリー! 資料がない!」と焦りだしました。スライドがうまく出せず、一瞬パニックに。 「インア…、インザ…、インザイメージ」。慣れない英語での発表にも悪戦苦闘。「Which area?(どっちのエリアで?)」などとべテランエンジニアから直接質問を受けますが、答えることができません。周りの議論に圧倒され、メモを取ることに精いっぱいです。 「難しいですね。僕もまだまだ理解が追いついていないので」と石原さん。言語の壁と知識の壁に直面しています。 「しっかりしていないと置いていかれる。最近はとりあえずできることを頑張ろうかなと…。難しいですね」。2つの壁をどうにか越えようと、目の前の仕事に奮闘しています。
■どうしても手にしたい「2ナノ半導体」
“日の丸半導体”復活のため、いま日本がどうしても手に入れたいモノがあります。その実物を今回特別に、IBMリサーチの半導体部門トップであるムケシュ・カレさんが見せてくれました。傷や汚れが付くのを防ぐため、触れるには手袋が必須です。 それは「2ナノ半導体」。かつてない速度で高度な計算が可能になる、高性能な次世代の半導体です。未来のAIや自動運転などに必要不可欠なものです。石原さんたちが目指すのは、この「2ナノ半導体」の大量生産。世界ではまだ、どのメーカーも実現できていません。 「ワクワクしますね。装置をみると」。石原さんたちの視線の先にある箱のような機械が、大量生産の成功の鍵を握っています。今年12月には、ここにあるものよりもさらに最新のものがラピダスの北海道の工場に搬入される予定です。 石原さん 「何台必要なのかな、量産だったら。1台じゃないでしょ、だって」 別の新人エンジニア 「(1台では)絶対に無理でしょ。3(台)、2(台)…?」 石原さん 「楽しみ半分、大変なんだろうなという心配も半分」