33歳で欧州初挑戦、谷口彰悟が覆すキャリアの常識「ステップアップを狙っている。これからもギラギラしていく」
ヨーロッパ組として臨むアジア最終予選
9月に入ると、2026年の北中米ワールドカップ出場を懸けたアジア最終予選に臨む森保ジャパンに招集された。ヨーロッパ組という肩書がつくのも、もちろん初めての体験だった。 「コンディションを最優先していただいてチャーター便を用意してもらった点を含めて、ストレスを最低限に抑えてもらっているので、そこには本当に感謝しています」 埼玉スタジアムに中国代表を迎える9月5日の初戦へ向けて、ヨーロッパから帰国するチャーター便を手配した日本サッカー協会に感謝しながら、谷口はモードを代表へ切り替えている。 「前回の活動から時間も空いているし、それぞれが所属クラブでプレーしていて、あるいはクラブが変わった選手もいる。僕も所属クラブが変わった一人なので、当然やり方も変わるし、メンバーも変わるし、いろいろなところでいろいろな変化が起きていますけど、代表に帰ってきたからには頭のスイッチを切り替えて、全力を尽くして最終予選を戦っていかないといけない」 また、谷口が日本に滞在している間に、シントトロイデンは今夏に就任したばかりのイタリア出身のクリスティアン・ラタンツィオ監督を成績不振に伴って解任した。ベルギー出身のフェリス・マッズ新監督が就任したニュースを、谷口は「SNSで知りました」と明かしている。 「クラブからは連絡もきていなかったですし、初めて知ったときには『マジか……』と思いましたけど、いまは代表期間中なので最終予選に集中しています」
31歳で臨んだワールドカップが転機に。「サッカー人生で後悔したくない」
谷口自身は年齢の壁を意識せずにキャリアを歩んできた。30歳になる直前の2021年6月。約3年半ぶりに代表へ復帰した際に、谷口は「自分で自分の可能性は制限しません」と語っている。 「年齢のところで言うと、フィジカル、メンタル、経験を含めていまが本当に一番いい状態だと自分のなかでは思っています。ディフェンダーはさまざまな経験を通して学んでいくポジションでもあるので、その意味でもいまは非常に充実している。ただ、僕には国際経験が少ないし、その差は正直、大きい。それを埋めるためにはいろいろな方法があると思っていますけど、現状で置かれている立場でしっかりとやっていかなければ、この先に何も見えてこないと思っています」 当時は東京五輪に臨むU-23日本代表に冨安健洋と、オーバーエイジで吉田麻也が招集。センターバック陣が再編成されたなかで、川崎の最終ラインに長く君臨してきた谷口も招集されていた。 「2人の壁が高いのは、代表戦を見ていれば誰でもわかる。でも、2人の陰に甘んじているようではダメ。空いた2枠に入れてもらったかもしれないけど、このチャンスを生かしたい」 川崎で培ってきたものをアピールした谷口は、カタールワールドカップ出場を懸けた同年11月のアジア最終予選から森保ジャパンに定着。先述したように本大会ではスペイン代表とのグループステージ最終戦、クロアチア代表とのラウンド16で、3バックの右で先発フル出場した。 そして、31歳にして初めてワールドカップを戦った過程で、自身に足りなかった国際経験を日常から積み重ねていく覚悟を決めた。カタール大会後に発表されたアル・ラーヤンへの移籍。谷口は「本当にたくさん悩みました」と愛着深い川崎を退団し、退路を断つに至った理由を明かしている。 「これからもフロンターレで自分自身とチームのレベルアップを目指していく選択肢もありましたが、海外のまったく違ったサッカー環境に身を置き、サッカー選手として成長したいという思いでチャレンジする決断をくだしました。キャプテンという責任ある立場で、非常に申し訳ないと考えています。しかし、サッカー選手としてまだまだ成長できる可能性はあると感じましたし、残りの自分のサッカー人生でチャレンジをしなかったことへの後悔はしたくないと考えました」